おやぢの部屋2
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BACH/Messe in h-Moll
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Carolyn Sampson(Sop), Anke Vondung(Alt)
Danidl Johannsen(Ten), Tobias Berndt(Bas)
Hans-Christoph Rademann/
Gächinger Kantorei Stuttgart
Freiburger Barockorchester
CARUS/83.315(CD, DVD)




バッハの「ロ短調ミサ」は、一応バッハの最晩年の1749年頃に完成したものですが、「Sanctus」は1724年のライプツィヒのクリスマス礼拝のために作られたとされていますし、「Kyrie」と「Gloria」は1733年にドレスデン選帝侯に即位したフリードリヒ・アウグスト2世に献呈するために作られました。残りの部分は1749年頃に新たに作られ、「Sanctus」はこの時期に少し手を加えて記譜し直されています。これらのスコアは全体としてのタイトルこそないものの、「1番」から「4番」までの通し番号を付けられてひとまとめにされていますから、バッハは最終的に今までの素材を集約してようやく「大きなミサ曲」に仕上げたことになります。
現在ではベルリン国立図書館に保存されているその自筆スコアには、後の息子のC.P.E.バッハなどの手による書き込みや訂正の跡がありますが、最近の精密な研究により、バッハの真筆のみを抽出することも可能になり、「新バッハ全集」の楽譜もウーヴェ・ヴォルフの校訂による新しいものが2009年に出版されています。
ただ、このスコアとは別に、「Kyrie」と「Gloria」が1733年にドレスデンで演奏された時のためにほとんどがバッハ自身の手によって作られたパート譜もドレスデンの図書館に保存されていました。ここでバッハは、スコアを少し改訂した形でパート譜を作っています。その改訂はスコアには反映させてはいなかったので、そこで2種類の楽譜が出来てしまったことになります。
もちろん、この「ドレスデン・パート譜」の存在は以前から知られていて、1983年にはファクシミリも出版されています。新しい「新バッハ全集」でも、例えば「7a」の「Domine Deus」では、その相違の一部が表記されています。しかし、今に至るまで、どんな楽譜も自筆稿のスコアを第1次資料として採用していたため、この「ドレスデン・パート譜」を元に校訂された印刷楽譜は出版されたことはありませんでした。しかし、今回CARUSが新しい「ロ短調」の楽譜を出版する際に校訂を担当したウルリヒ・ライジンガーは、初めてこの「ドレスデン・パート譜」を全面的に資料として採用しています。そして、その2014年に出版されたばかりの楽譜を使って、世界で初めて録音されたのが、このCDなのです。2枚組のCDの最後には、特に違いがはっきりしているさっきの「Domine Deus」と、バスのソロのあちこちでやはり異なっている「Quoniam tu solus Sanctus」の「通常版」による演奏がボーナス・トラックとして収録されています(さらに「Sanctus」の1724年バージョンまで)。
今回購入したのは、スタンダードなCDではなく、そこにオマケのDVDが一緒になった「特別版」です。このDVDには、指揮者のラーデマンが演奏に先立ってベルリンの図書館でウーヴェ・ヴォルフと一緒に自筆スコアの現物を眺めるシーンなどが入ったドキュメンタリーやライブ映像、そして、「ドレスデン・パート譜」をすべてPDFにしたデータが収録されています。
例えば、さっきの「Domine Deus」ではフルートのパート譜がこんな風になっていることが分かります。

新バッハ全集(ヴォルフ版)はこちら。

まだCARUS版のスコアが手元にないのではっきりしたことはわかりませんが、多分自筆パート譜と同じ装飾がそこでも印刷されているのでしょう。常識的には、これは曲の中の同じリズムの部分はすべてこの逆付点(ロンバルディア・リズム)で演奏しろ、という意味ですし、同じフレーズを演奏する他のパートにも適用されるということです。それの、一つの解釈としての演奏が、ここでは行われています。
ラーデマンはそのような、単なる新しい楽譜の「音サンプル」にとどまらない、とてもレベルの高い演奏を、リリンクから引き継いだゲヒンガー・カントライから引き出しています。日本人の佐藤俊介がコンサートマスターを務めるフライブルク・バロック・オーケストラも、とても澄み切った響きのアンサンブルでそれをサポートしています。

CD Artwork © Carus-Verlag
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by jurassic_oyaji | 2015-08-24 22:23 | 合唱 | Comments(0)