おやぢの部屋2
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BEETHOVEN/Symphony No.5, SCHUBERT/Symphony No.7
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近衛秀麿/
読売日本交響楽団
NAXOS/NYCC-27292




最近、近衛秀麿がちょっとしたブームになっているようですね。もちろん、何もないところには「ブーム」などは生まれませんから、ちゃんと仕掛け人はいます。いったいどちらが先なのかは分かりませんが、菅野冬樹さんという方が今までだれも目にしたことのなかった近衛秀麿に関する資料を発見して、それから「驚くべき事実が明らかになった」ということを書いた本が出版されるのと、それとおそらく同じソースによる番組がNHK-BSで放送されることが同時に行われて、クラシック音楽の関係者の間ではかなりの反響を呼んでいるのだそうです。なんせ、そのBSの放送が、ご好評につきすぐに再放送されてしまったぐらいですからね。
その番組は、確かに興味深いものでした。ただのドキュメンタリーだと思いきや、民放のバラエティ番組でよく登場する「再現映像」なども挿入されて、エンターテインメント性もかなりのものがありますから、とても分かりやすく「事実」が語られていたのではないでしょうか。そこで、今まで漠然と日本のオーケストラの黎明期を支えた人物の一人、ぐらいの認識しかなかったものが、思った以上に「すごい」人だったことが分かってきた、というところでしょうか。なんせ1世紀近くも前の1924年に、日本人として初めてベルリン・フィルを指揮して演奏会を開いたというのですから、これは間違いなく「すごい」ことなのでしょう。ただ、この件に関しては、先に読んでいた本では著者がその演奏会のポスターを持ってベルリン・フィルの事務局に行った時には公式記録にそのようなことはなかったものが、大変貴重なものを見せていただいた、ということになって新たに資料に加えられた、というような状況だったのですが、テレビの方では、そのポスターがあたかもベルリン・フィルに昔から保存されていた資料のように扱われていたのがおかしいですね。厳密なことを言えば、これはよくある「やらせ」ということになるのでしょう。べつにNHKのことですからそもそも真に受ける人はいないとは思いますが。
いずれにしても、それだけ盛り上げておいて、ご本人が演奏している録音を売り出そうというのが、レコード会社の魂胆です。そこで出てきたのが、1968年に読売日本交響楽団と録音した音源です。これは、「学研」が「世界の名曲」的な何枚かのLPを作るために録音したもので、1995年には「学研プラッツ」レーベルから「近衛秀麿の世界」という4枚組のCDセットになってリイシューされていました。その後、2000年に分売された時のライナーノーツが、こちらにも転用されています。
マスターテープから24/192でトランスファーされたデータをマスタリング、もちろんステレオですが、マスターテープの保存状態はあまり良くなかったようで、ドロップアウトは数知れず、編集のためにつないだ個所などはおそらく剥離が起こっているのでしょう、はっくり分かるほどの音切れがあります。オーケストラもまだ出来て間もないころですから、弦楽器はともかく、木管のアンサンブルなどはかなり悲惨ですね。
そんな怪しげな録音ですが、テレビにも登場した「近衛版」を実際に音として聴くことができるのは貴重です。番組で、このCDと同じ音源を使って紹介されていた第1楽章の478小節目の頭の八分音符をカットした部分(08:01)には実は「伏線」があって、その前の423小節目からのティンパニの八分音符4個+四分音符という音型が、すべてこの「運命の動機」のリズムに替えられているのですね(07:23から)。
一番ウケたのは終楽章の391小節目から(08:12)。ここでは、テーマを1小節遅れて低弦が模倣しているのですが、そこにトロンボーンを加えて補強しているのですよ。こんなことは、ベートーヴェンのオーケストレーションではまずありえません。でも、それは今だから分かること、当時は大真面目でこういうことをやっていた人がいたんですね。

CD Artwork © Naxos Japan Inc.
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by jurassic_oyaji | 2015-09-05 19:31 | オーケストラ | Comments(0)