おやぢの部屋2
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PÄRT/St. John Passion
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Elizabeth Layton(Vn), Elizabeth Wilson(Vc)
Melinda Maxwell(Ob), Catherine Ducktt(Fg)
Paul Hillier/
The Hilliard Ensemble
The Western Wind Chamber Choir
ARTHAUS/ 109115(DVD)




今まで単品でリリースされていたペルトの「ヨハネ受難曲」の1988年のライブ映像が、1990年ごろに制作されたドキュメンタリーの映像と抱き合わせになって、装いも新たに日本語字幕も付いてリイシューされました。1935年に生まれたペルトは今年で80歳を迎えるというお祝いの意味もあるのでしょう、国内版の「帯」には、こんなタイトルが踊っています。

でもなあ。こんな「記念」とかいう文字は、オリジナルのパッケージを調ぺると、どこにも見当たらないのですよね。こんなミエミエの安っぽいタイトルにまんまと騙されて、最近の映像も入っているのだと思い込んで入手してしまったのは不覚でした。
さらに、今度はオリジナルの方のタイトルの捏造まで見つかることになります。「ヨハネ」との抱き合わせの映像が「The Early Years」というので、それこそ今の「ペルト印」の作風を確立する前の時代のペルトの姿を紹介してくれるようなものなのかな、と思ってしまいましたよ。確かに最初に聴こえてくるのはまさにその時期を象徴する超駄作「クレド」ですが、それ以外の、例えばリハーサルとかBGMで使われているのは、まさに「今」のペルトの技法、「ティンティナブリ」に基づく音楽なのですよね。ちっとも「アーリー」じゃないじゃないか、と、最後に流れたクレジットを見ると、そのタイトルは「Who is Arvo Pärt? / A Journey into the Mind of a Composer」というものだったのではありませんか。このタイトルに見られる制作意図、そして実際の内容からは、「アーリー」などという言葉は見当はずれ以外のなにものでもありません。まったく、レーベルも代理店も、ここは揃いも揃っていい加減なんだから。
「ヨハネ」は、なかなか見ごたえのあるものでした。いや、元の映像はテレビの中継で、最初にアナウンサーだか評論家だかが出てきて解説を述べるシーンまで入っていますが、ダラダラ音だけを聴いていたのでは分からなかったようなところがいっぱいありました。なにしろ、手元にある初版のCDには途中でトラック・ナンバーが入っていなくてCDプレーヤーでは途中で飛ばすことが出来ずに、71分間ひたすら聴き続けなければいけないのですから。
まず、もちろんこれは、この作品が初めて録音されたその有名なECM盤と同じ時期に、ほぼ同じメンバーで演奏されているというのが、うれしいところです。メインのメンバーはポール・ヒリアーが指揮をしているヒリヤード・アンサンブルですが、ECM盤ではゲストで参加していたソプラノのテッサ・ボナーが、ここではメアリー・シアズに替わっているというのが、唯一の違いです。
受難曲にお約束のエヴァンゲリストのパートは、ここではSATBの4人による四重唱が担当します。ソロはマイケル・ジョージのイエスとジョン・ポッターのピラトだけ、そのほかの「ソリスト」の部分と、群衆は12人編成の合唱団、「ザ・ウェスト・ウィンド・チェンバー・クワイア」によって歌われます。ここでも、今回のDVDでは元のソースのクレジットですでにECM盤にあった「チェンバー」が名前から抜けています。
そして、そこに楽器も加わります。それは役割がはっきりしていて、4人のエヴァンゲリストにはVn、Vc、Ob、Fgの4人のアンサンブルが伴奏、それ以外の伴奏はオルガンだけです。
「受難曲」とはいっても、ペルトの場合はバッハのような「オラトリオ風受難曲」ではなく、まるでシュッツの「応唱受難曲」のような、単に聖書の言葉を朗読するだけのシンプルなものです。もちろん、音楽もシンプルそのもの、しかしそれは、ドキュメンタリーの中で語られた、「ジャガイモの中に最初から入っていたBフラットを掘り出す」という作業の繰り返しから生まれた彼独自の技法によって、知らず知らずのうちに心の中に最初から潜んでいたかもしれない高揚感が感じられるようになってくるという不思議な体験を生むものでした。
CD同様、ジョン・ポッターだけがそんな流れをせき止めるような、ちょっと余裕のない歌い方なのが残念です。

DVD Artwork © Arthaus Music GmbH
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by jurassic_oyaji | 2015-09-07 20:44 | 合唱 | Comments(0)