おやぢの部屋2
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BACH/Magnificat
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Julia Doyle, Joanne Lunn(Sop)
Clare Wilkinson(MS)
Nicholas Mulroy(Ten), Mattew Brook(Bas)
John Butt/
Dunedin Consort
LINN/CKD 469(hybrid SACD)




ロ短調ミサヨハネ受難曲マタイ受難曲というバッハの「三大宗教曲」(全部買うと散財します)に、それぞれほかの人とは違うアプローチで迫っていたへそ曲がりのジョン・バットは、この3曲に次いで人気のある「マニフィカート」でも、絶対に誰もやらないようなやり方で録音してくれました。それは、この曲が初演された時の模様を、できる限り忠実に再現する、というものです。これは「ヨハネ」の時にも使っていた技ですね。
現在普通に演奏される「マニフィカート」は、ニ長調の版ですが、これは初演の時の形ではありません。バッハがライプツィヒのカントルに就任した1723年のクリスマス、聖ニコライ教会で12月25日の晩課の時に演奏されたものは変ホ長調で作られていました。ニ長調のものは、それから10年ほど経ってから(正確な年代は特定されていません)別の機会のために書き直された形です。その際に楽器編成も変わり、もちろんバッハのことですから細かいところでのフレーズが改訂されています。さらに、変ホ長調版に入っていた本来の「マニフィカート」のテキスト以外による4曲の「聖歌」もカットされています。
初稿の変ホ長調版も今ではかなりの録音があります。面白いのは、LP時代のヘルムート・リリンクの録音。こちらで聴くことが出来ますが、その頃はまだ楽譜が出版されていなかったために彼はニ長調版の中に旧バッハ全集から「付録」という形で出版されていた聖歌を挿入するという折衷策をとって演奏しているのです。もちろん、新しいHÄNSSLERでの録音ではきちんと変ホ長調版の楽譜を使っています。
今回のバットのパフォーマンスは、この「マニフィカート」のほかに、「カンタータBWV63」が演奏されているというのが目玉です。ただ、これは別に彼が最初にやったことではなく、1995年のフィリップ・ピケット盤(L'OISEAU-LYRE)や2002年のフィリップ・ヘレヴェッヘ盤(HARMONIA MUNDI)などですでにこの2曲のカップリングが採用されています。バットは、このほかにオルガンのコラール・プレリュードなどを加えて、「礼拝」という形を疑似体験できるようにしているのでしょう。なんせ、「ヨハネ」でもやっていたように、教会に臨席した信者さんたちがみんなで歌う「会衆合唱」までも、実現させているのですからね。
このカンタータは、ヴァイマール時代の1714年のクリスマスに初演されたものの再演です。4本のトランペットと3本のオーボエにティンパニが加わったとても華やかなサウンドでキリストの誕生への喜びを表現しています。かと思うと、続くソプラノとバスのデュエットでは、一転して真摯な祈りが歌われるという、振幅の大きい作品です。最後の合唱で、「ヨハネ」の「21f」の「Wir haben ein Gesetz」という群衆の合唱と同じテーマが聴こえます。作られたのはこのカンタータの方が先ですが。
初稿の「マニフィカート」には改訂稿にはあるフルートは入っておらず、2人のオーボエ奏者が持ち替えでリコーダーを演奏することになっています(このSACDでは別の人が吹いています)。ですから、最初の曲などではフルートは聴こえてきません。面白いのは、テノールのソロで歌われる「Deposuit potentes」のヴァイオリンのオブリガートの最初のフレーズが、1オクターブ低くなっていることです。これは、改訂で半音低くしたら、最低音のGがF♯になってしまったので、仕方なく1オクターブ上げたのでしょう。改訂稿に慣れていると奇異に感じてしまいますが、こちらの方が本当は自然な形なのでしょうね。
この曲でのテノールの声が、なんだか逆相で録音されているようでちょっと気になります。それと、合唱は基本的にソリスト5人、そこにリピエーノとしてもう5人加わるのですが、例えば「Fecit potentiam」などでは、それぞれのパートの2人の声がバラバラで、合唱の体をなしていません。この団体、かつてはこんなことはなかったはずなのに。

SACD Artwork © Linn Records
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by jurassic_oyaji | 2015-09-09 21:15 | 合唱 | Comments(0)