おやぢの部屋2
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BRUCKNER/Sinfonie Nr.7
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Simone Young/
Philharmoniker Hamburg
OEHMS/OC 688(hybrid SACD)




「女子はブルックナーが嫌い」というのは、かなりの真実味を持って語られているフレーズです。「デートでコンサートに行くときに、ブルックナーの交響曲を選ぶほど愚かなことはない」という変形もありますね。確かに、まわりを見渡すと、「超」が付くほどのクラシック通と思われる女子なのに「ブルックナーのどこがいいのか、さっぱり分からないわ」っつー言葉を吐いたりする人がいたりしますからね。
そんな、女子からは冷たい目で見られているブルックナーですから、演奏する方でも女性指揮者が取り上げることはあまりないだろう、と思ってしまいますが、シモーネ・ヤングはそんな「偏見」をあっさり打ち破ってしまいました。彼女は、2005年から10年間総支配人・音楽総監督のポストにあったハンブルク国立歌劇場のピット・オケ、ハンブルク・フィルを率いて、ついに女性指揮者で初めてのブルックナーの交響曲全集を完成させてしまったのです。しかもSACDで。
2006年3月の交響曲第2番を皮切りに始まったこのチームによるブルックナーの録音は、2015年の3月に行われた交響曲第5番によって、全曲の録音が完成しました。その間、一貫して用いていたのは「初稿」でした。すべてが初稿でハイレゾのSACD、そして女性指揮者という三点セットも、もちろん史上初めてのことでしょう。
今回の「7番」に関しては、改訂は行われていませんから「校訂」が異なる2種類の原典版が存在しているだけです。元が同じなら、誰が校訂しても同じではないか、という一般論は、楽譜の場合は通用しないのは常識、ここでも、その「ハース版」と「ノヴァーク版」とでは、微妙に異なっています。最もわかりやすいのが、第2楽章のクライマックスで登場する打楽器の有無です。ヤングが使っている楽譜の出版元はブックレットに明記されていますが、それは「Musikwissenschaftlicher Verlag(音楽学出版社)」、これは、レオポルド・ノヴァークの校訂による楽譜です。ですから、さっきのところでは盛大にシンバルとトライアングルが鳴り響きます。こういう風に校訂者ではなく出版社の名前が表記されているのも、この全集の特徴です。
ヤングのブルックナーを初めて聴いたのは「4番」ですが、あれから10年近く経ってだいぶ貫録が付いてきたように、ジャケットの写真を見ると感じます。それはおそらく、もはや「女性指揮者」などという奇異な目で見られる対象ではなくなった、一人の円熟した指揮者としての貫録なのでしょう。とは言っても、彼女のブルックナーに対するアプローチは、「4番」当時と変わることはなく、ひたすらチャーミングにこれらの曲に立ち向かっています。特に、今回の「7番」は、もしかしたら全交響曲の中で最もチャーミングな作品ですから、思う存分彼女の持ち味が反映されています。
しかし、彼女の場合、時折一部のオタクによって「軟弱」と評されるこの作品の一つの側面を強調するようなことは決してありません。彼女が築き上げたのは、強靭なリリシズムがもたらす確固たる建造物のような美しい世界でした。そこからは、時折作曲家のオルガニスト、あるいは合唱作曲家としての姿さえ垣間見ることができるはずです。終楽章の最後に、テーマが再現される個所があります。ここは普通の指揮者ではテンポを落として、最後の粘りを見せるところなのに、ヤングはいともあっさり処理しています。これは、大仰な終止形を演出しなくても、ブルックナーの壮大な世界は十分に描き出すことができるのだ、という自信の表れなのかもしれません。
一つ問題なのは、その終楽章の頭の部分。トラックが変わるなり第1ヴァイオリンのテーマが始まりますが、本当はその前に1拍分第2ヴァイオリンのトレモロが入っているので、もっと前でトラックを切らなければいけないはずです。というより、そのトレモロ自体がここではなくなっています。これはかなり深刻。

SACD Artwork © Oehms Classics Musikproduktion GmbH
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by jurassic_oyaji | 2015-09-17 20:30 | オーケストラ | Comments(0)