おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
ZOFO Plays Terry Riley
c0039487_22502161.jpg



中越啓介(Pf)
Eva-Maria Zimmermann(Pf)
SONO LUMINUS/DSL-92189(CD, BD-A)




「惑星」で素晴らしい演奏を聴かせてくれたピアノ・デュオのチーム「ZOFO」の新しいアルバムです。ジャケットがUFOみたいですね。もちろんこのレーベルですから、普通のCDの他に2チャンネルとマルチチャンネルが収録されたBD-Aが入っています。2チャンネルの場合は24/192という最高のスペック、しかし、オリジナルの録音は24/352.8のDXDによる、7.1サラウンドです。
「惑星」での目の覚めるように爽快なテクニックの冴えが印象的だったチームが、今回はテリー・ライリーを取り上げた、というのに、まずかなりの違和感がありました。「ミニマル・ミュージックの始祖」として多くの人から崇められているライリーの音楽は、その代表作「in C」で見られるような、かなりの自由度を持ったおおらかなものだ、という印象は決して拭うことはできません。さらに、数少ないライリー体験の中でも、純正調に調律されたオルガンによる夜を徹しての即興演奏なども、彼のオリジナリティを象徴するものとして刷り込まれています。
しかし、ここで取り上げられている作品は、そのような「不確定」なものではなく、4手ピアノのためにしっかりとすべての音符が楽譜として「書かれて」いる音楽なのですよ。多くの「現代作曲家」と同じように、彼もついに「普通の」作曲家に成り下がってしまっていたのでしょうか。このデュオ・チームの日本人の方のメンバー中越さんが、「私が最初に体験したライリーの作品『in C』と、4手ピアノのための作品があまりにも違っていたので、本当に驚いた」と語っているぐらいですから、それは誰しもが感じていたことなのでしょう。
いつライリーがそのようなスタイルに「変わって」しまったのかはよく分かりませんが、このアルバムで演奏されているメインの作品が含まれる「The Heaven Ladder」という曲集の「第5巻」は、アメリカのピアニスト、サラ・カーヒルの委嘱によって作られました。最後に演奏されている「Cinco de Mayo(5月5日)」という曲に出会った彼らは、それを機会にライリー本人とコンタクトを取ることになり、ほかの曲も紹介してもらったということです。そのうちのいくつかは、ライリー自身が彼らのために「改訂」してくれたそうです。
そのような、オリジナルの「4手ピアノ」の他に、クロノス・クァルテットからの委嘱で作られた弦楽四重奏の編成だったものを、彼らが4手ピアノのために編曲したもの、さらには、彼ら自身が委嘱した作品なども、このアルバムには収録されています。
まるでピアソラのような、ほとんどできそこないのタンゴでしかない、かつてのライリーの面影などはどこにもない音楽の応酬の中に身を置くのは、なんとも居心地の悪い体験でした。例えば、同じ「The Heaven Ladder」シリーズでも、別のピアニスト、グローリア・チェンの委嘱で作られた「第7巻」に含まれる「Simone's Lullaby」などは、ほとんど「ラ・フォリア」と見まがうばかりの平易な変奏曲ですし、「G Song」というクロノスのための曲なども、まるでヒット・チューンのような感傷的な「歌」に過ぎません。ZOFOのために作られた「Praying Mantis Rag」に至っては、中国風の大道芸人でも出てきそうないとも軽快なラグタイム、良くこんな曲をまじめに演奏したものだ、と思わずにはいられません。
唯一の救いは、先ほどの「チンコ・デ・マイヨ」という、カタカナで書くとちょっとヒワイな曲です。基本、陽気なラテン音楽なのですが、真ん中の部分にかつてのライリーを思わせるような内部奏法を用いた静謐な部分を見つけることが出来ました。
録音は、いくらスペックがハイレゾでも、エンジニアの耳が悪ければどうしようもないという見本のようなもの、BD-Aでは差音でしょうか、ピアノの弦同士の干渉の結果出てくる音がとても耳障りです。あまりに解像度が高いので、聴こえなくてもいい音まで聴こえてしまうという悪例でしょう。CDの方が余計なものが聴こえない分、ストレスを感じません。

CD & BD-A Artwork © Sono Luminus, LLC.
[PR]
by jurassic_oyaji | 2015-09-29 22:53 | 現代音楽 | Comments(0)