おやぢの部屋2
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The Song of the Stars/British Music for Upper Voice
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Christopher Finch/
Wells Cathedral School Choralia
NAXOS/8.573427




「アッパー・ヴォイス・クワイア」というのは耳慣れない言葉ですが、要は「上の方の声部による合唱」ということです。冷蔵庫には入れません(それは「タッパー」)。和声学の教科書に出てくるような4声体の混声合唱では、楽譜はピアノと同じように2段になっていて、上はト音譜表、下はヘ音譜表で書かれています。その「上の方」に書かれているソプラノとアルトのことを「アッパー・ヴォイス」、反対に「下の方」に書かれているテナーとベースを「ローワー・ヴォイス」と呼ぶのです。
もしかしたら、「テナーにもト音譜表が使われているではないか」とおっしゃる方もいるかもしれません。確かに、2段しかない楽譜ではテナーはヘ音譜表の中にありますが、きちんと各声部を1段ずつ使った4段の楽譜では、テナーはト音譜表で書かれます。しかし、よく見ると、そのト音記号の下に小さく「8」という数字があることに気づくことはありませんか(ないものもありますが)?そう、正確にはテナーが歌っている音は、ト音譜表の上での音よりも1オクターブ低い音なのです。つまり、ト音譜表で書いたときには、テナーは「移調楽器」として扱われているのです。それを表わすためにト音記号の下に「8」という数字が付いているのですね。
ですから、「アッパー・ヴォイス・クワイア」というのは、実音でト音譜表に収まる声だけで歌われた合唱、ということになりますね。具体的には女声合唱と児童合唱がこれに相当します。あるいは、アルトのパートを成人男声が歌う場合もあるかもしれません。
今回のCDで演奏している「ウェルズ大聖堂スクール・コラリア」という団体も、やはり女声合唱団です。この大聖堂に付属の学校の生徒たちの中からオーディションによって選ばれた24人のメンバーから成る、2012年に結成されたばかりのとても新しい合唱団です。
彼女たちが歌うのは、古くはホルストから、最も若い1978年生まれのタリク・オレガンまでのイギリスの作曲家の作品です。合唱の世界では有名なヒット・メーカーが並びますが、これが世界初録音という作品が結構あるので、そういう意味では貴重なのではないでしょうか。「参考音源」というやつですね。
最初に歌われるのが、そんな世界初録音の一つ、このアルバムのタイトルにもなっているボブ・チルコットの「The Song of the Stars」。いかにも彼らしい、適度に体が動いてくるような軽快なリズムの作品、彼女たちはそんなリズムに軽々と乗って歌います。ちょっとだけ、口先だけの演奏のようにも感じられますが、それはおそらくこの作曲家の資質から来るものなのでしょう。
ホルストの有名な「リグ・ヴェーダ第3番」も、とても素朴な演奏が好感度の高いものですが、やはり何か上っ面だけをなぞっているという感は否めません。おそらく、それは彼女たちの作品に対するシンパシーの問題なのかもしれません。
ですから、そういう意味で、ジョン・タヴナーの曲が始まったらそれまでになかった何か熱い思いが感じられるようになったのは、単なる偶然ではなかったのでしょう。それまでの、ちょっとよそよそしい感じが、「Ikon of Saint Hilda」という少し前の作品では完全に払拭されて、この合唱団のポテンシャルが満開になったような充足感を味わうことが出来ました。ただ、ここで演奏とは全く関係のないところでの問題が発生します。続く、いずれも世界初録音(タヴナーの作品でも、まだそういうものがあったのですね)の「Theotoke」と「Agnus Dei」が、それぞれの演奏時間は正しいのですが、タイトルが入れ替わっていたのです。まあ、このレーベルではよくあることですが、困ったことですね。もちろんNMLでもそのまんまです。
それと、やはりナクソスは、と思ってしまったのが、音のあまりのしょぼさ。いくらCDでもこれではあんまり、最近のハイレゾの録音を聴きなれた耳には、とても耐えられません。

CD Artwork © Naxos Rights US, Inc.
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by jurassic_oyaji | 2015-10-01 20:34 | 合唱 | Comments(0)