おやぢの部屋2
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VERDI/Aida
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Anja Harteros(Aida)
Jonas Kaufmann(Radamès)
Ekaterina Semenchuk(Amneris)
Antonio Pappano/
Orchestra e Coro dell'Accademia Nazionale di Santa Cecilia
WARNER/0824646106639




新しく録音された「アイーダ」の3枚組CDが、対訳付きの豪華ブックレットに収まって3000円ちょっとで買えるというのですから、うれしいですね。あんこは入っていませんが(それは「たい焼き」)。いろいろ事情もあるのでしょうが、もはやこのレーベルのような大会社が見捨ててしまったと思われていた、セッション録音によるオペラ全曲盤がまだ作られていたことを、素直に喜びたいものです。
「このレーベル」というのも、やはり時代の流れで単純には語れなくなっています。表面上は「WARNER」ですが、ほんの数年前までは「EMI」と言っていたレーベルです。ただ、この、2者の関係も微妙に変化しているようで、当初2013年の時点では何が何でもWARNER、みたいな姿勢だったものが、最近ではEMIのサブレーベルであった「PARLOPHONE」という名前がきちんとクレジットされるようになってきたようで、「かつてはEMIだった」という情報がこのように目に見えるようになったのには、一安心です。

セッション録音とは言っても、そこはこの時代ですからローマでコンサート形式の「アイーダ」を上演するにあたって、そのリハーサルと並行してマイクを立てて録音したものです。その模様がブックレットの写真でうかがえますが、オーケストラの弦楽器は16型と、普通のオペラハウスのピットの陣容よりも潤沢な人数が揃っています。金管の再低音にはバルブ・バス・トロンボーンを縦にひん曲げた「チンバッソ」という楽器の姿も見えますね。さすが、イタリアのオーケストラです。しかし、こちらで述べられているように、ヴェルディがこの作品のために指定した楽器は、この「チンバッソ」ではありませんでした。
それはともかく、この大編成のオーケストラの響きはとても柔軟性に富むものでした。ダイナミック・レンジがとても広いのですよね。前奏曲などほんとに聴こえるか聴こえないかという音で始まりますから、この時点で音量を上げたりするとそのあとでとんでもない大音響になった時にびっくりしてしまうことになります。このあたりは、この3年後に作られた「レクイエム」とよく似た音響設計ですね。ただ、いかんせんこれはただのCDですから、それはただ音が大きくなったり小さくなったりというだけのことで、その結果得られるはずのえも言われぬピアニッシモの肌触りなどは、望むべくもありません。
そんな、ちょっと物足りない録音ではありますが、このオーケストラの魅力はしっかり伝わってきます。このステージではソリストたちはオーケストラの中、トロンボーンと打楽器に挟まれた位置で歌っているので、その息遣いがすぐ近くで感じられるという利点からでしょうか、木管楽器などの演奏はとてもソリストにシンクロしています。というか、フルートがこれほどソリストに寄り添うようなパートだったことに、初めて気づかされました。
もちろん、これを入手したのはカウフマンがラダメスを歌っていたからです。最近はワーグナーをあまり聴く機会がなくなっているのがちょっとさびしいところで、彼がいったいどこへ向かおうとしているのかを確かめたい、という気持ちもありました。実際、彼がイタリア・オペラを歌う時には、ワーグナーとは明らかに歌い方を変えていますし、その結果はそれほど悪いものではありませんでした。しかし、ここで「アイーダ」の全曲を歌っているのを聴いてみると、やはりそこにはちょっとした「無理」が感じられてしまいます。彼は持てる能力を総動員してラダメス歌いになり切ってはいるのですが、その「努力のあと」が見えてしまうのですよね。その象徴的なものが、ソット・ヴォーチェの多用です。確かに、音楽的にはとても効果的で、演奏の品位は高まるものの、そこからはイタリア・オペラには欠かせない「開放感」のようなものがほとんど感じられないのですね。やはり、このジャンルでのカウフマンは、本来の力を出し切ることが出来ないのでは、と思えてしょうがありません。

CD Artwork © Parlophone Records Limited
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by jurassic_oyaji | 2015-10-11 19:29 | オペラ | Comments(0)