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MOZART/Li Ratto dal Serraglio
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Filippo Morace(Osmino), Francesco Marsiglia(Belmonte)
Sandra Pastrana(Constanza), Gabriele Sagona(Selim)
Carlos Natale(Pedrillo), Tatiana Aguiar(Bionda)
Giovanni Battista Rigon
I Polifonici Vicentini, Orchestra del Teatro Olimpico
BONGIOVANNNI/GB 2476




先日フランス語版「魔笛」というゲテモノを聴いたばかりなのに、またまたモーツァルトのドイツ語のオペラを改変したもののCDが出ました。今回は「後宮」のイタリア語版です。
「魔笛」同様、こちらも改変を行った張本人の名前はわかっています。それは、ペーター・リヒテンタール。こちらでやはりモーツァルトの「レクイエム」を、なんと弦楽四重奏に編曲していた、モーツァルトおたくのアマチュア音楽家です。本職は医者ですが、オーストリア・ハンガリー帝国の役人として、イタリアのミラノに赴任していました。そこでモーツァルトの長男であるカール・トーマス・モーツァルトと友人になります。そして、リヒテンタールとカールの二人は、作曲家の死後はほとんど顧みられなくなったモーツァルトのオペラをミラノのスカラ座で上演するために奔走したのです。その甲斐あって、1800年代の初頭には、彼の主なオペラはほとんどスカラ座で演じられることになりました。
しかし、「後宮」の場合は、そのトルコ趣味の故に、なかなか取り上げられなかったため、リヒテンタールはまずは単にテキストをイタリア語に直したものを作り、それは1824年にはブライトコプフから出版もされました。しかし、彼は後にさらにこの作品の魅力を彼の同時代の趣味に合わせたものに作り替えようと、新たな「改訂」を行います。そして、1838年に完成したのが、このCDに録音されているバージョンです。彼としては、良かれと思って行った多くの改変は、しかしそれほど受け入れられず、結局当時はスカラ座で上演されることはありませんでした。同じオペラハウスでイタリアで初めて「後宮」が上演されたのは1952年のことだったのです。もちろん、これは普通のイタリア語バージョン、ここでは若かりしマリア・カラスが出演しています。スカラ座のカラス
このリヒテンタールの1838年の改訂版は、長いことミラノ音楽院の図書館に保存されていましたが、それを用いて2012年の5月に世界で始めた上演を行ったのが、イタリアのヴィチェンツァにあるオリンピコ劇場でした。しかし、このCDライナーノーツを執筆したマルコ・ベゲッリさんが、「この初演は、おそらく最初で最後の上演となるであろう」というフレーズでその分を終えているのが、何とも異様です。
このCDは、その上演のライブ録音、まずはごく普通に序曲が始まりますが、それがとても貧しい音だったのに失望させられます。録音レベルが低いのがまず気になりますし、弦楽器がかなり少なめのオーケストラの演奏が、何ともしょぼいのですよ。少人数でもやりようはあるはずなのに、そのアンサンブルはもうガタガタ、とてもプロのオーケストラとは思えません。
そして、当然アリアはイタリア語で歌われ、セリフの部分は、リヒテンタール自身が作ったレシタティーヴォ・セッコに変えられています。さらに、何よりもヘンなのが、オリジナルではセリフだけだったセリムが「歌って」いることです。まあ、別に歌いたいなら歌わせてもかまわないのですが、そのセリムとコンスタンツェ(ここでは「コンスタンツァ」)のデュエットなどというものはオリジナルにはもちろんありませんから、当時の他の作曲家の作品が流用されているのです。それは、ペーター・フォン・ヴィンターという人のものなのですが、いかにもロッシーニの亜流といった、モーツァルトの趣味とはかなり隔たりのある音楽なのですね。
そして、本来3幕構成だったものを「オペラ・ブッファ」の基本形である2幕に直した際に、第1幕の最後に長大な「フィナーレ」をでっち上げていますが、それがいかにもごちゃまぜのとんでもないものになっています。
そこでCD1は終わって、2枚目には「第2幕」が入っているのですが、とてもそこまで聴き続ける勇気はありませんでしたよ。やはり、こんなものは未来永劫再演されることはあり得ません。ベゲッリさんは、とても正直な方でした。

CD Artwork © Bongiovanni
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by jurassic_oyaji | 2015-10-19 20:25 | オペラ | Comments(0)