おやぢの部屋2
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STRAVINSKY/Le Sacre du printemps
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Teodor Currentzis/
MusicAeterna
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テオドール・クレンツィスとムジカエテルナのアルバムとしては、モーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」の新録音が待たれるところですが、それは来年にならないと入手できません。その代わりと言ってはなんですが、2013年に録音されていた「春の祭典」がリリースされました。
彼らの本拠地はロシアのペルミのオペラハウスですが、これが録音されたのはドイツのケルンでした。この年に彼らは「ルール・トリエンナーレ」という、ドイツのルール地方(「ルール工業地帯」って、むかし習いましたね)のボーフム、エッセンを中心に毎年行われている芸術イベントに参加していたのだそうです。「トリエンナーレ」というと、普通は「3年おき」という感じですが、ここでは3年ごとにテーマというかコンセプトが変わるというような意味合いです。
2013年の10月5日と6日に、かつては工場だったような建物で、ストラヴィンスキーの「春の祭典(Rite of Spring)」が演奏された後に、ドミトリー・クルリャンツキーという、クレンツィスと同世代の作曲家が作った(?)「春の騒動(Riot of Spring)」という曲が「演奏」されていました。この「騒動」の模様をネットで見ることが出来ますが、それはほとんど「フラッシュ・モブ」のノリで、指揮者のクレンツィスがヴァイオリンをかき鳴らすのを合図に、オケのメンバーがそれぞれの楽器を勝手に鳴らし始めるというものです。そのうち、メンバーがステージから客席に降りてきて、お客さんの前で音を出すだけではなく、中には自分の楽器をお客さんに貸してあげて弾いてもらうようなシーンも見られるようになります。そんな、15分ほどの「作品」です。
タイトルからも分かるように、これはもろ「春の祭典」のパロディ、メインの「祭典」の精神のようなものを別の形のパフォーマンスとして表現していたのでしょう。
これを含めて、このコンサートのライブ録音をそのまま出しても面白かったのでしょうが、商品としてのCDではそこまでやるのは憚られたのでしょう、ここに収録されているのは、このコンサートの次の日の7日から9日までの間に、近くのケルンで行われたセッションによって録音された「春の祭典」だけです。お客さんがいないところでは「騒動」は成立しませんから、必然的にコンテンツは「祭典」だけの35分というコンパクトなものになりました。
これを聴いて、彼らによるモーツァルトのオペラを聴いた時と同じような、とても自発的で伸び伸びとしたものを感じることが出来ました。それぞれの楽器が、まるでオペラの登場人物のようにそれぞれの個性をとことん主張しているのですね。それは、冒頭のファゴットのソロに続くバスクラリネット、コールアングレ、Esクラリネット、アルトフルートといった、普段はあまり目立たない楽器たちがそれぞれにしっかり「歌」を聴かせてくれていることからも分かります。例えば、これとは全く逆のアプローチでひたすら淡々と演奏させている同じレーベルのブーレーズ盤あたりと比べてみると、まるで別の曲かと思うほどの違いが感じられることでしょう。かれはぶれずに指揮をしていました。
もう1ヵ所、今まではどの演奏でも気づかされることのなかったのに、今回初めて意識した、「春のロンド」の最初に現れて、そのパートの最後を締めくくるフレーズの持つ、抒情性です。1回目はEsクラとバスクラ、2回目はEsクラとアルトフルートによる平行15度(2オクターブ)進行によるこの単純なメロディが、こんなに哀愁に満ちていたなんて。
そして、何よりも圧巻なのが、トゥッティで盛り上がるところのとてつもないドライブ感です。それはまるで、ヘビメタのように重心の低いエネルギーですべてのものをなぎ倒すほどの力を持ったものです。うっとりするようなリリシズムと、頭をからっぽにして浸れるヴァイオレンス、そのどちらもてんこ盛りの爽快感が、ここにはあります。

CD Artwork © Sony Music Entertainment
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by jurassic_oyaji | 2015-10-21 21:10 | オーケストラ | Comments(0)