おやぢの部屋2
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BERNSTEIN/Symphony No.3 'Kaddish', Missa Brevis, The Lark
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Claire Bloom(Nar), Kelly Nassief(Sop), Pauli Mestre(CT)
Marin Alsop/
The Maryland State Boychoir, The Washington Chorus
The Sa[]o Paulo Symphony Choir & Orchestra
Baltimore Symphony Orchestra
NAXOS/8.559742




バーンスタインの「カディッシュ」がメインタイトルのCDですが、ここではそれに加えて「ミサ・ブレヴィス」と、その「元ネタ」ともいうべき「ひばり」が収録されています。「カディッシュ」はボルティモアで録音されていますが、その他の曲はサン・パウロでの録音です。
「ひばり」は、ジャンヌ・ダルクを主人公にして1953年に作られたジャン・アヌイの同名の戯曲を、1955年にリリアン・ヘルマンが英訳したものへの付随音楽として作られました。彼女は「キャンディード」というしょうもないミュージカルで脚本を担当していたため、その縁でバーンスタインに作曲を依頼したのです。これはブロードウェイで229回も上演されたのだそうです。
ここでバーンスタインが用意した音楽には、フランス語によるフランスのシャンソンや俗謡からの引用と、ミサとレクイエムの通常文からのラテン語のテキストによるものの2種類があります。そのシャンソンは有名なクロード・ル・ジュヌの「Revecy denir du printans(また春が来た)」という軽やかな曲ですが、この中に登場する「ヘミオレ」のリズムはバーンスタインのお気に入りだったようで、同じころに作られた「ウェストサイド・ストーリー」の中の「アメリカ」というナンバーにも使われていますね。
出版されている楽譜は音楽の部分だけをさらに編曲したものですが、ここでオールソップが演奏しているのは、彼女自身もかかわって校訂した、オリジナルのセリフの一部がナレーターによって朗読されるバージョンです。さらに、音楽も本来劇場で上演される時のような形に戻っています。
1988年に彼は弟子のジョージ・スティールとともに、ロバート・ショーがアトランタ交響楽団の音楽監督を退任するときの記念コンサートのために、「ミサ・ブレヴィス」を、「ひばり」の素材を使って再構築します。
「元ネタ」には、「ミサ」には必要のない「レクイエム」のテキストを使ったテキストもありましたから、それは「ミサ」の「Kyrie」に転生されています。その他は、ほとんどそのまま「ミサ」として生まれ変わっています。ただ、「ミサ」では最後の「Agnus Dei」の楽章にもう一つ、後半のテキストも含めた「Dona nobis pacem」が加わっています。そこに転用されていたのは元ネタの「Revecy denir du printans」に由来する部分、このために、敬虔ぶっていたこの作品は、瞬時に世俗的なものに変われます。
メインの「カディッシュ」は、一応「交響曲第3番」ということにはなっていますが、もはや古典的な意味での「交響曲」の形からは大きく逸脱したフォルムを持っています。こちらも、ナレーターが大きな役割を持っていて、バーンスタイン自身が書いたテキストを読み上げることによって音楽をつなぐという、演劇的な要素が加わったものです。「カディッシュ」というのは、梅酒のことではなく(それは「果実酒」)、アラム語とヘブライ語が混在したテキストによって、死者を悼むために唱えられる祈りのことです。バーンスタインは、このテキストに様々なテイストを持つ音楽を付けました。特に、真ん中の部分でソプラノのソロによって歌われるものは、とてもリリカルで癒しを与えられるものです。
この「交響曲」は、そもそもは1955年にボストン交響楽団の創立75記念にと委嘱されたものですが、このころ多忙を極めていたバーンスタインがこの曲を完成させたのは1963年のことでした。そして、折しも凶弾に倒れたジョン・F・ケネディへの「レクイエム」として、献呈されたのです。その後、1977年には作曲家自身によってナレーションの部分が大幅に改訂され、さらに2003年にも彼の娘のジェイミー・バーンスタインによる新たなテキストが提案されていましたが、このCDではオールソップは改訂前のテキストに戻して演奏しています。
これはある意味、バーンスタインの「改訂」の足跡を明らかにした、興味深いCDです。

CD Artwork © Naxos Rights US, Inc.
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by jurassic_oyaji | 2015-11-03 20:12 | 合唱 | Comments(0)