おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
SIX





The King's Singers
SIGNUM/SIGCD056



キングズ・シンガーズの最新アルバム、タイトルの「SIX」というのが意味深ですが、これはメンバーが6人であるのと、収められている曲が6曲という意味が込められているのでしょう。それぞれの曲は3分から4分の長さ、つまり、これはいわゆる「ミニアルバム」というものですね。トータル・タイムは20分しかありません。
様々なレーベルの変遷をたどったキングズ・シンガーズ、現在はこのSIGNUMレーベルに所属、前作のジェズアルドについては「おやぢ」でも紹介したことがあります。ただ、あの時の担当者はちょっとした勘違いをしていたようですね。そのジェズアルドの真摯な演奏につい心をひかれてしまったのでしょうが、その時のライナーに載っていた「今後のリリース予定」を見て、それがキングズ・シンガーズがこれから録音するアイテムだと思ってしまったのですね。その中にはタリスの9枚組の全集なども含まれていましたから、いよいよこのグループも初心に返って、このような地味な曲をきちんと録音したりする気になったのだな、と思ったのは、無理もないことでした。
そこに、「ニューアルバム発売」のニュースが入ってきました。ついにタリスが入荷したのかな、と思ったら、それはポップス、しかもミニアルバムだというではありませんか。確かに、このところこのグループのライブ映像なども見る機会がありましたが、そんな堅苦しい曲を演奏しているような気配はありませんでした。しかも、現物を手にしてそのライナーを見ると、「Also available」として紹介されていたのは、最初に出たクリスマスアルバムとこの前のジェズアルドだけ、タリスのタの字もありません。となると、あの「予定」はいったいなんだったのでしょう。そこで、もう1度ジェズアルドのライナーを見直してみたら、それは全く別の団体の演奏のCDの紹介でした。どうやら、あのジェズアルドも彼らにしたらちょっと肌合いの異なるもの、やはり、彼らの本質的な指向性は変わってはいなかったのですね。ちょっと残念なような、それでいてホッとしたような感じでした。
そんな、いつもながらのポップス色が前面に押し出されたミニアルバム、最初の曲は、「ダウン・トゥー・ザ・リバー・トゥー・プレイ」という黒人霊歌、というよりは、ジョージ・クルーニー主演の「オー・ブラザー!」という映画の中で使われた曲。そして、2曲目がビートルズの「ブラックバード」というよりは、やはり映画の挿入歌として、ダコタ・ファニングの可愛さが光っていた「アイ・アム・サム」の中で使われていた曲、と紹介すべきなのでしょう。つまり、いずれもごく最近カバーされて大々的に露出されたもの、いわば「新曲」としてキングズ・シンガーズも歌っている、というノリなのでしょう。このあたりが、やはり現在の彼らの立場を象徴しているのだ、という感じが強くしてしまいます。しかし、続く3曲目の「ザ・ウィッシング・ツリー」という曲だけは、ちょっと趣を異にしています。彼らから委嘱を受けてジョビー・タルボットという作曲家が作った曲で、2002年の「プロムス」で演奏されたといいますから、一応は「現代音楽」、確かにユニークな和声と、テキストの扱いには独特の世界があります。しかし、それでも底にあるのはポップ・ミュージックのテイスト、事実、タルボットという人は「ディヴァイン・コメディ」というロック・グループのメンバーでもあった人ですから、それも頷けることです。
いずれにしても、曇りのないハーモニーで軽やかに歌い上げるという彼らの特質は、ここでも充分に発揮されています。ただ、それをポップスとして楽しむには、あまりにも洗練されすぎている、というのが、いつもながらの彼らの限界なのですが。
[PR]
by jurassic_oyaji | 2005-08-13 20:09 | 合唱 | Comments(0)