おやぢの部屋2
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MADERNA/Requiem
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Diana Tomsche(Sop), Kathrin Göring(Alt)
Bernhard Berchtold(Ten), Renatus Mészár(Bas)
Frank Beermann/
MDR Rundfunkchor Leipzig(by Bart van Reyn)
Robert-Schumann-Philharmonie
CAPRICCIO/C5231




ブルーノ・マデルナが作った「レクイエム」の、世界初録音です。彼が第二次世界大戦中にドイツの捕虜となってダッハウの強制収容所に送られ、終戦で釈放された時には、「『レクイエム』を書いて、その後死ぬという可能性しかなかった」と考えていたのだそうです。そして、1945年までにはこの曲の前半(第1部)の構想を完成させますが、そのあと数か月間はこの曲には関わらず、1946年の7月になって、全曲を完成させました。
その年に、恩師マリピエロの計らいでアメリカでの初演が準備されましたが、結局それは実現する事はなく、アメリカに渡った楽譜のコピーは、そのまま図書館の書庫の中で眠り続けてしまうのです。
ほどなくしてマデルナは当時の最先端の「現代作曲技法」と出会ってしまい、もはや過去の技法で作られたこの作品には何の愛着も持てなくなってしまいます。おかげで、この美しい作品が初演されるまでには完成してから63年もかかってしまいました。
その「初演」を企てたのは、マデルナと同郷のヴェネツィア出身の音楽学者、ヴェニエロ・リッツァルディという人。彼は2009年にこの曲を出版するとともに、同じ年の11月にはヴェネツィアのフェニーチェ劇場でこの曲を初めて音にしたのでした。今回の録音は、2013年というマデルナの没後40周年にあたって、9月19日にドイツで行われたコンサートをライブ録音したものです。
曲は、オーソドックスな「レクイエム」の典礼文のあとに、ヴェルディやフォーレの作品にも用いられている「Libera me」が加わるというテキストで、4人のソリストと混声合唱、そして、ピアノが大活躍するオーケストラが加わります。「Dies irae」までの第1部とそれ以降の第2部は、それぞれ切れ目なく演奏されます。
冒頭の「Requiem」がア・カペラの合唱で始まることで、この曲での合唱の重要性が分かります。まるでヴェルディの「レクイエム」のようなピアニシモで始まった合唱は、しかし、かなり古風なポリフォニーの形をとっていました。さらに、その中には明らかにグレゴリオ聖歌からの引用も認められます。確かに、これはのちのマデルナの作風とは相容れないものだったのかもしれません。その結果、もはやこれを「無かったことにしたい」と思ったのも、「現代音楽」の作曲家としてはとても分かりやすい毅然とした態度だったのではないでしょうか。全く逆の思考パターンを見せている某〇ンデレツキのような日和見主義とは正反対の生き方です。
「Requiem」の最後、「ad te omnis caro veniet」の部分になって、やっと楽器が入ってきます。それはヴァイオリンソロとピアノというとてもメランコリックなものでした(ここでトラックが変わっているのは、マスタリングのミス)。本格的にオーケストラが加わるのは「Kyrie」になってからですが、そこではピアノとティンパニのパルスが異様に目立つという、まるでカール・オルフのような分かりやすい様相も見せています。
そして、「Dies irae」の途中の「Quid sum miser tunc dicturus?」になって、やっとソリストの登場です。合唱の中から一条の光のように出現するそのテノールは、やはりヴェルディの作品のような印象が与えられるものでした。「Ricordare」になると、今度はバスのソロが、抑揚の少ない、まさにプレーン・チャントに酷似したモノローグを歌います。これを導き出すヴァイオリンのソロは、ほとんどアルヴォ・ペルトの世界です。
第2部では、ソリストにソプラノとアルトも加わり、華やかなテイストが増します。「Lux
aeterna」で、まるで木魚のような打楽器をバックに合唱がシュプレッヒ・ゲザンクを披露するあたりは、やはり彼のこの先を予見させるものなのでしょうか。
皮肉にも、マデルナが亡くなってしばらくすると、彼が切り捨てた音楽が「現代音楽」の主流になってしまいました。そんな時代に甦ったこの作品を聴くというのは、まさに「現代音楽」のパラドックスを体験することにほかなりません。これを聴けば健康になれる?(それは「デトックス」)

CD Artwork © Deutschlandradio, Capriccio
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by jurassic_oyaji | 2015-11-11 20:12 | 合唱 | Comments(0)