おやぢの部屋2
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KRACHT/Stabat Mater Stabat Pater
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Egon Kracht & The Troupe:
Elisa Roep(Sop), Mark Omvlee(Ten)
Natje Lohsw(Alt), Angelo Verploegen(FH)
Jakob Klaasse(Org), Noortje Braat(Vn)
Diederik van Dijk(Vc), Egon Kracht(Cb)
BUZZ/ZZ76113(hybrid SACD)




全く聞いたことのないレーベルですが、この「BUZZ」というのはオランダのChallenge Recordsのサブレーベルのようですね。クラシックではおなじみのChallengeのジャズ部門でしょうか。しかも、録音担当もクラシックのChallengeと同じNorthStar Recording、エンジニアも全く同じというのですから、これは間違いのない音が聴けるはずです。
ただ、そもそも、このアルバムのリーダー、コントラバス奏者のEgon Krachtという人の情報が、日本語では全くヒットしません。オランダ人なので「エホン・クラハト」とでも発音するのでしょうが、それで検索しても、全く引っかからないのですよ。原語での検索だとオランダ語のWIKIで、やっと「1966年生まれのコントラバス奏者、作曲家」というのが分かるぐらいです。
このクラハトさんは、彼の作曲家としてのスタートとなった「マタイ受難曲」(2002年)、ユダからの視点で書かれた新たなテキストによる「ユダ受難曲」(2005年)と、これまでにすでに2曲の「受難曲」を発表しています。そのシリーズの3作目として2011年に初演されたのが、この「スターバト・マーテル/スターバト・パーテル」というタイトルの曲です。その時と同じ「ザ・トゥループ」という彼のグループによって2013年に録音され、オランダでは2014年に発表されたSACDが、やっと日本でもリリースされました。
「スターバト・マーテル」というのは、有名な「Stabat mater dolorosa」という「悲しみにくれる母親が佇んでいた」という意味のテキストで始まる宗教曲のことです。かつては「悲しみの聖母」という邦題がありましたが、今では誰も使いません。シーズンまっただ中なのに(それは「歳暮」)。もちろん、この「母親」というのはその「聖母」マリア、佇んでいるのは息子のイエスが処刑された十字架の下ですね。そこに、クラハトさんは「Stabat pater dolorosus」という、「父親」を主語にしたテキストを新たに作って加えたのですよ。
ですから、ジャケットもそれぞれに対応して、表は「母」、裏は「父」になっています。この「父」の写真はすごいですね。この毛むくじゃらの腕がどうなっているのかこの写真ではよく分からなかったのですが、どうやら自分の腕を首の後ろで組んで、悲しみをこらえている、というポーズのようですね。
そんな、「男目線」のラテン語のテキストと、さらに新作のオランダ語の歌詞とが交錯して、この1時間以上の大曲は進んでいきます。まずは、ヴァイオリン、チェロ、コントラバスという3つの弦楽器が奏でる神秘的なピアニシモに導かれて聴こえてきたのが、ごくまっとうな「合唱」だったのには、一安心です。それこそゴスペルみたいなものが出てくるのではないかとひやひやしていたものですから。
その合唱(正確にはソプラノ、アルト、テノールの重唱)によるメインテーマは、なんだかどこかで聴いたことのあるようなメロディでした。プーランクの「スターバト・マーテル」あたりが、いちばん近いでしょうか。そして、そこに絡む弦楽器は、まさにペルトの世界です。ですから、これは「ジャズ」ではなく、ごくフツーの「現代音楽」のようなテイストを持っていました。ただ、そこに時折インプロヴィゼーションが挿入されるあたりが、ジャズがベースの音楽であることの証なのでしょう。ただ、そのソロはもっぱらフリューゲル・ホルンがとっていて、リーダーのクラハトのソロは1ヵ所だけ、あとはアンサンブルに徹しているようです。
と、気持ちはわかるのですが、なんか「クラシック」にも「ジャズ」にもなりきれていないところに、居心地の悪さを感じてしまいます。その責任は声楽のソリストたちにあることは間違いないのでは。
録音は、予想通りのすばらしさでした。その声楽陣の澄んだ「音」は、なかなか他では聴けないものです。ですから、なおさら、その歌い方に対する中途半端なスタンスが、際立ってしまいます。

SACD Artwork © Turtle Records/Edison Production Company BV
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by jurassic_oyaji | 2015-11-21 21:03 | 合唱 | Comments(0)