おやぢの部屋2
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そもそもイズミティは音楽ホールではありません
 久しぶりに、仙台で外国のオーケストラを聴きました。ゲルギエフ指揮のミュンヘン・フィル、ご存じのように、ゲルギエフはつい最近ロンドン交響楽団の首席指揮者から、このオーケストラの首席指揮者へと「転職」したばかり、この日本ツアーはそのお披露目ということになるのでしょう。そんなビッグな組み合わせのオーケストラが仙台に来るのは久しぶりだということと、さらに、ピアノ協奏曲のソリストとしてあの辻井くんが出演するということが重なり、チケットの入手は極めて難しいと思われていました。ですから、わざわざ先行発売の時に焦って電話をかけて席をとることは出来たのですが、それは前から3列目というとんでもない席でした。それでも24,000円のS席です。しかし、いざ一般販売になってみると、「即日完売」などということはさらさらなく、プレイガイドに行ってみると空席が山のように残っていましたよ。その中では、もっと安い席でもはるかにオーケストラを聴くにはふさわしい席もたくさんありましたから、これは大失敗。せっかくの久しぶりのまともなオケなのに、そんな席で聴かなければならないなんてと、暗澹たる気持ちになっていました。
 会場は、この間ニューフィルが演奏したばかりのイズミティです。開演15分前に入ったら、すでにほぼ満席、ニューフィルの時とはえらい違いです。そして、問題の「3-33」という席に座ります。ステージはコンチェルトの仕様ですでにピアノが入っていますが、この席だとピアノの裏側の響板がよく見えるという、もう悲しくなるほどの視界です。指揮者はピアノの天板の陰になって全く見えませんし、ピアニストも頭がかろうじて見えるだけですからね。もちろん、オーケストラのメンバーは最前列だけ、管楽器などは譜面台の陰になっています。かろうじてフルートの1番の足元だけが、隙間から見えてくるだけです。
 こうなったら、もう音に集中するしかありません。なんたって、ピアノの音が最も美しいのは響板からの音なのですから、辻井くんをそんな環境で聴けるなんて、またとない機会じゃないですか。それよりも、足元はよく見えますから、ペダルの踏み方がとてもよく分かります。特に左ペダルをかなり使っていましたね。時にはハーフで。
 辻井くんを生で聴くのは、もちろん初めて。それがベートーヴェンの5番という、テレビでも全く聴いたことのないレパートリーだったので、いったいどんなことになるのかなと思っていました。しかし、それはもうこの名門オーケストラに堂々と勝負を挑んだ素晴らしいものでした。第3楽章のすさまじいテンポには、オケはついていけなかったようでしたからね。そして、彼が第2楽章あたりで聴かせてくれた超ピアニシモには、本当に驚いてしまいました。スタインウェイのフルコンであんな小さな音を出すことができるなんて。
 オケの方は、こんなに近くで聴いても全くアラが聴こえないという、ふだんアマオケを聴きなれている耳には、久しぶりの快感を味わえました。これが当たり前なんですけどね。でも、木管を使っていたフルートのトップは、ちょっと、でしたね。2楽章のソロであんなに控えめに吹くことはないと思うのですがね。
 曲が終わって、ソリスト・アンコールは、ベートーヴェンの「悲愴」ソナタの第2楽章。これが始まったら、不覚にも涙が出てきましたね。この曲には何か思い入れがあったのでしょうか。それで終わるのかと思ったら、それに続いてショパンの「革命エチュード」ですよ。いやあ、アンコールでこんな曲を軽々と演奏するなんて。
 後半は、チャイコフスキーの「悲愴」、フルートのトップが座るときに顔が見えたので、どこかで見た顔だと思ってメンバー表を見てみたら、コフラーでした。こちらはゴールドの楽器でしたから、コンチェルトは別の人だったのでしょう。ゲルギエフの指揮姿もやっと見えるようになりました。指揮棒は、最近のショスタコのBDで使っていたような「つまようじ」ではなく、もうちょっと長めの「焼き鳥の串」でした。とてもエネルギッシュにオーケストラを煽って、あちこちで興奮させてくれましたよ。仙台ではまず日常的には聴くことのできない16型のオーケストラのサウンドを満喫です。
 こうなってくると、1月に仙台にやってくるベルリン・シュターツカペレも聴きたくなってしまいます。しかし、メインがなんとブルックナーの2番、しかもチケットは、今回のミュンヘンフィルよりさらに高額のS席が26,000円というベラボーな価格設定です。最も安い席でも16,000円というのですから、もうぼったくりとしか言いようがありません。こんだけ払うんなら、東京まで往復できてしまいます。それこそ川崎あたりに行って日本のオケを聴いた方が、よっぽど得るものが大きいのでは。
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by jurassic_oyaji | 2015-11-28 21:40 | 禁断 | Comments(0)