おやぢの部屋2
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20th Century Harpsichord Music
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Christopher D. Lewis(Cem)
NAXOS/8.573364




こちらで、20世紀のチェンバロのための協奏曲を演奏していた、ウェールズで生まれアメリカで活躍しているチェンバロ奏者のクリストファー・D・ルイスの、NAXOSへの2枚目のアルバムです。前回はオーケストラをバックにした演奏でしたが今回は彼だけによるソロ、さらに、大きく異なるのは使っている楽器です。前回の楽器は「ヒストリカル・チェンバロ」と呼ばれている、現在世界中でほぼ100%使われているバロック時代の楽器を復元したタイプのものでしたが、今回は「モダン・チェンバロ」が使われています。このアルバムに登場するプーランクやフランセが「チェンバロ」のための曲を作った時にはこの世には「モダン・チェンバロ」しかありませんでしたから、それは当たり前のことなのですが、今ではこの楽器自体が非常に貴重なものになっています。
ここでルイスが使っているのは、そんな「モダン・チェンバロ」の代表とも言える、プレイエルのランドフスカ・モデルです。おそらく、このジャケットの写真と同じものなのでしょう、2弾鍵盤ですがストップは16フィート、8フィート×2、4フィートという4種類、さらに、音色を変える「リュートストップ」やカプラーなども加わっているので、それを操作するには、足元にある7つのペダルが必要です。このペダルの中には、ピアノの右ペダルと同じ「ダンパー・ペダル」も含まれています。なんせ、ピアノに負けない音をチェンバロで出そうとして開発された楽器ですから、ダンパーがないと音を切ることが出来ないほどの大きな音が出るのですね。
そんな楽器の音を、まずプーランクの「フランス組曲」で味わっていただきましょう。オリジナルはブラスバンドにチェンバロという編成ですが、それをチェンバロだけで演奏しています。バロック時代の宮廷舞曲をモデルにした7つの曲から成っていますが、ここでのストップの切り替えによる音色やテクスチャーの変化には驚かされます。そこに、朗々と響き渡る残響が加わるのですから、これはまさに「ピアノを超えた」新しい楽器という印象を与えるには十分なものがあります。
次の、これが世界初録音となるフランセの「クラヴサンのための2つの小品」になると、その音色に対するチャレンジには更なる驚きが待っています。1曲目の「Grave」という指示のある曲は、まるで葬送行進曲のような重々しい歩みで進んでいきますが、もっぱら使われるのが16フィートのストップを駆使した超低音です。それも、ヒストリカルでは絶対に出すことのできない分厚い音ですから、その「ビョン・ビョン」というお腹に響くビートは、例えば最近のダンスミュージックにも通じるものを感じさせます。クラヴサンによるクラブサウンドですね。
チェコの作曲家マルティヌーの作品も、ここには3曲収められています。その中で最も初期に作られた「クラヴサンのための2つの小品」では、やはり「モダン・チェンバロ」ならではの鋭い打鍵を駆使した音楽が聴かれます。
もう一人、「6人組」のメンバーの中では最も知名度の低いルイ・デュレが、様々な2つの楽器のために作った「10のインヴェンション」をピアノソロに編曲したものをが、チェンバロで演奏されています。タイトル通りのバッハを意識したポリフォニックな2声の曲ですが、中には半音階を駆使した無調を思わせるようなものも有り、それが妙にこの楽器とマッチしています。
かつて、「モダン・チェンバロ」が「ヒストリカル・チェンバロ」の代わりを務めることが出来なかったように、「ヒストリカル」では「モダン」のために作られた曲を演奏することはできません。これは全く別の楽器として共存すべきものなのに、今では「モダン」はすっかり衰退してしまい、絶滅の一歩手前です。こんなCDを聴くにつけ、このまま博物館の中でしか見られない楽器になってしまうのは、あまりにもったいないような気がします。

CD Artwork © Naxos Rights US, Inc.
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by jurassic_oyaji | 2015-11-29 19:58 | ピアノ | Comments(0)