おやぢの部屋2
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FÜRSTENAU/Masonic Music
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Mario Carbotta(Fl)
Aldo Martinoni(Guit)
Diego Fasolis/
RTSI Choir of Lugano
DYNAMIC/DM8002




ネットでセールをやっていたので覗いてみたら、こんなCDが見つかりました。そこで「フュルステナウ」という名前に引っかかって入手してしまいました。確か、「Bouquets des tons」というタイトルのフルートのエチュードを作った人が、そんな名前だったはず、しかもこれはフルートが加わった演奏が聴けるというのですから、興味が湧いてくるのも当然です。余談ですが、このエチュードは「音の花束(ブーケ)」と訳されているようですが、本当はそんなかわいらしい訳語ではなく、「音の束」ぐらいの即物的なもののはずです。とても手におえないほどのたくさんの音が「束」になっている、という感じのとても難しい練習曲ですから。
しかし、手元に届いてみると、それはどうやら別の「フュルステナウ」さんであることが分かりました。エチュードを作ったのはアントン・ベルンハルト・フュルステナウ、このCDの作曲家はカスパール・フュルステナウです。とは言っても、この二人は全くの他人ではなく、実は親子だった、ということも分かりました。カスパールの息子がアントン・ベルンハルトですね。しかもその息子のモリッツもフルーティストになったという、3代フルーティストが続いた家系だったのです。
1772年にドイツのミュンスターで生まれたカスパール・フュルステナウは、最初はオーボエ奏者だった父からオーボエを教わりますが、その父が亡くなったために作曲家でファゴット奏者でもあったアントン・ロンベルクの元に引き取られます。そこで彼はファゴットを習うのですが、やがてフルートに転向、見る見るうちに腕を上げて、15歳になったころには軍楽隊で演奏することで、家族を養うこともできるようになっていたそうです。後にオルデンブルクの宮廷オーケストラの団員となり、その地で47年の生涯を終えることになります。
作曲家として、カスパールは2曲のフルート協奏曲をはじめ、フルートが入った室内楽を数多く残しています。特にギターとのアンサンブルが多いのだそうです。しかし、今では全く知られていない彼の作品ですから、この中の曲もこのCDが録音された1998年の時点ではすべて世界初録音でした。
中でも、彼が属していたフリーメーソンの集会で歌われたであろう、やはりフルートとギターの伴奏が付いた男声合唱とソロのための歌は、まさに「珍品」と言えるものでしょう。「友情のために」とか、「貞節のために」といった、まさにフリーメーソンの教義が述べられている歌詞なのですが、それに付けられた音楽がとてもシンプルで和みます。というより、同じフリーメーソンの影響を強く受けているモーツァルトの「魔笛」を思わせるようなフレーズがあちこちに登場しているのには、興味が尽きません。
それを彩るフルートのオブリガートは、とても技巧的なものでした。これは間違いなくカスパール自身が集会では吹いていたのでしょうね。歌っているのは、ルガーノにあるスイス・イタリア語地区放送の合唱団の男声パートです。もちろん、ソロも合唱団の団員が担当しています。時にはテノール、時にはバリトンあたりが、得意げに喉を披露している中で、男声合唱が渋いハーモニーを付けるという、まさにフリーメーソンの集会そのものの光景が眼前に広がります。ここで、今ではバロック音楽の指揮者として高名なディエゴ・ファソリスの名前がクレジットされていますが、別にこれは指揮者がどうのという音楽ではないような気がします。どうやら、このアルバムのメインはフルーティストのようですね。
その、フルートを吹いているマリオ・カルボッタというパスタ料理のような名前(それは「カルボナーラ」)の人は、こちらのメルカダンテの協奏曲集で聴いたことがありました。ちょっとこんな曲にはもったいないような立派な演奏を聴かせてくれています。カップリングのギターとのデュオ作品も、同じような作風で楽しめます。

CD Artwork © DYNAMIC S.r.l.
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by jurassic_oyaji | 2015-12-16 00:19 | フルート | Comments(0)