おやぢの部屋2
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BRAHMS, BRUCKNER/Motets
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Nigel Short/
Tenebrae
SIGNUM/SIGCD430




半世紀近くの歴史を持つイギリスの6人組の男声アンサンブル「キングズ・シンガーズ」のメンバーの中には、そこを離れてからも合唱界で活躍している人がたくさんいます。創設メンバーとして25年間も在籍していたアラステア・ヒュームの後任者として1994年に加入し、2000年までセカンド・カウンターテナーのパートを務めていたナイジェル・ショートもそんな人たちの一人でしょうと言うことができます。余談ですが、現在のこのパートは、彼の次の次に参加したティモシー・ウェイン=ライトが務めています。そんな風に、現在のこのアンサンブルのそれぞれのパートは、オリジナルメンバーから何代も後の後継者によって成り立っていることになります。現在のメンバーの最古参は、1990年に4代目のファースト・カウンターテナーとして加入したデイヴィッド・ハーレイ、彼の在籍年数はすでに25年になりますから、おそらくアラステア・ヒュームとサイモン・カーリントン(セカンド・バリトン)が持つ最長在籍記録を更新することになるでしょう。
ショートはアンサンブルを「卒業」したのち、合唱指揮者として活躍を始め、2001年には「テネブレ」という室内合唱団を創設して、オーケストラとの共演など多くのジャンルでの活動を行い、この合唱団を高水準なものに育て上げました。その一つの成果が、2011年に録音された、ロンドン交響楽団との共演によるフォーレの「レクイエム」などのアルバムです。ここでは、とても澄み切った響きと、それを支える完璧なピッチを聴くことが出来ました。
今回のアルバムには、基本的にこの合唱団だけのア・カペラで、ブルックナーとブラームスのモテットが収録されています。録音されたのは今年の1月、フォーレから4年後ですが、この合唱団はさらなる進化を遂げていました。というより、ショートの古巣のキングズ・シンガーズや他のイギリスの合唱団同様、この4年間にはメンバー自体が大幅に入れ替わっていたのです。アルトなどは5人のメンバーの中で同じ人は一人しかいません。
その結果、合唱団全体のダイナミック・レンジが格段に広がったような印象があります。特に、フォルテシモになった時の物理的なヴォリューム以上の、聴感的に迫ってくる音の大きさには、びっくりするほどのものがありました。それはおそらく、テナーの圧倒的な力によるものなのでしょう。そして、ピアニシモの時の音の小ささも驚異的、しかも、それはただ小さいのではなく、その中にしっかりとした表現が込められているというのがすごいところです。
そんなものすごい表現力で歌われたブルックナーのモテットは、今まで聴いてきたこれらの曲とは全く異なった次元の音楽となっていました。常々、これらの宗教曲の中には、音楽的には交響曲と同じ語法が込められているという印象はありました。しかし、それはあくまでミニチュアとしての交響曲というイメージであり、そこから交響曲のエキスが感じられる、という程度のものでした。ところが、この「テネブレ」の演奏では、まさに交響曲そのものの大きさが原寸大のスケールで感じられてしまったのです。
例えば「Locus iste」のような端正な曲からは、まるで交響曲第7番の第2楽章のような敬虔さと深みを味わうことが出来ます。さらに、この交響曲の持つ「祈り」の精神が、人の声で歌われることによってよりストレートに伝わっては来ないでしょうか。合唱だけではなく、3本のトロンボーンとオルガンが加わる「Ecce sacerdos magnus」には、まさにフィナーレのような壮大さまでもが備わってきます。
ブラームスのモテットになると、交響曲との関連性はかなり希薄になります。彼の場合は、それぞれのジャンルは求めるものが異なっていたのかもしれません。そんな中で、「ドイツ・レクイエム」の4曲目「Wie lieblich sind deine Wohnungen」が英語によって歌われているのが興味を引きます。そこからは、聴きなれたドイツ語版とは全く異なる情感が。

CD Artwork © Signum Records
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by jurassic_oyaji | 2015-12-21 21:34 | 合唱 | Comments(0)