おやぢの部屋2
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John Rutter/The Gift of Life and 7 sacred pieces
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John Rutter/
The Cambridge Singers
Royal Philharmonic Orchestra
COLLEGIUM/COLCD 138




久しぶりに、このジョン・ラッターのレーベルの新譜にお目にかかったような気がします。一時ユニバーサルから彼と彼の合唱団「ケンブリッジ・シンガーズ」のCDがリリースされたりしていたので、もうこちらは消滅してしまったと思っていたのですが、彼の原点はまだ健在でした。
原点と言えば、彼の業績で最初に評価されたのがフォーレの「レクイエム」のオリジナル・バージョンを再現したものとされる「ラッター版」の校訂者としての仕事でした。それ以来、彼の名前の日本語表記は「ラッター」で定着したのかと思っていたら、いつの間にか「ラター」というちょっとエロな言い方に変わっていました(それは「ラタイ」)。でも、今回のCDに代理店が付けた帯では、久しぶりに「ラッター」という文字があったので、ほっとしているところです。どうでもいいことですが。
ここに収められているのは、彼のここ数年間の新しい作品ばかりです。それらがすべてオーケストラとの共演で録音されています。まず、大規模な作品としては「子供のミサ」から10年ぶりとなるという、アルバムタイトルの「The Gift of Life」です。これは、彼の友人で教会の音楽監督を務めていた人が引退することになった記念の贈り物として作られました。その際に脳裏をよぎったのは、1985年に作った「レクイエム」なのだそうです。もちろんそれは死者のための音楽ですが、その反対の、それまでの人生を祝福するために使ってもいいのではないか、という発想です。というよりは、同じ大規模な声楽曲でも、ハイドンの「天地創造」のようなものを目指していたのだとか。
作品は6つの曲から出来ています。1曲目のイントロで、まるでハリウッドの映画音楽のような晴れ晴れしい音楽を聴いただけで、その祝典的な性格は伝わってきます。本体は変拍子やシンコペーションなどを多用した、彼ならではの明るさを持ったものなのですが、「レクイエム」のころには確かに存在していた、ちょっと難解な技法によって深みを見せていた部分が、この作品の中からはきれいさっぱりと消え去っていることに気づかされます。おそらく、このあたりが彼が晩年を迎えて到達した境地なのでしょう。
ですから、この大作を聴くときにも、雑念などは差し挟まないでひたすらそのキャッチーな音楽に浸るというのが、聴き手にとっても正しい姿勢なのではないでしょうか。いちおう3曲目などでは、少し暗めなモードとも無調とも取れるようなフレーズがさりげなく混じりこんでいることですし。
4曲目での最後のものすごい盛り上がりで、もうこれで終わっても全然おかしくない、という状況で、さらにヒット曲そのものの美しい曲が2つも続くのですから、聴いていて「得をした」感は満載です。
そして、それ以外に7曲の「宗教曲」が演奏されています。とは言っても、これらの中にはそのように言われて思い浮かべる敬虔さのようなものはあまりなく、もっと華麗で祝典的な作品が並んでいます。しかし、その中でラッターが2011年のあの東日本大震災の被災者のために作った「A flower remembered」は特別な意味を感じさせてくれるものでした。震災の翌年から毎年3月に京都の長岡京市で開催されている「Harmony for Japan」という合唱祭からの依頼によって作られ、2015年の3月7日に、その合唱祭で初演されています。なんでも、歌詞は日本の「俳句」にインスパイアされてラッター自身が書いたのだそうです。しかし曲の方はまさに「ラッター節」満開の、一度聴いたらすぐに覚えられるようなシンプルなものです。いや、そのシンプルさこそがこの曲の命、このCDで歌詞を見ながら初めて聴いた時には、不覚にも涙があふれてきました。同じようなコンセプトで某国営放送が執拗にヘビロテを繰り返している「花は咲く」などという駄作には、とてもそんな力はありません。
この曲には日本語版もありますが、英語版の方がより素直に心に響きます。

CD Artwork © Collegium Records
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by jurassic_oyaji | 2015-12-25 21:34 | 合唱 | Comments(0)