おやぢの部屋2
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TARNOW/Theremin Sonatas
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Carolinea Eyck(Th)
Christopher Tarnow(Pf)
GENUIN/GEN 15363




以前こちらで聴いていた、いまや世界一のテルミン奏者として大活躍している1987年生まれのドイツの美人テルミニスト、キャロリナ・アイク(エイクとも表記)のソロアルバムです。クラシックのみならず、幅広いジャンルの音楽家とのコラボレーションを展開している彼女ですが、今回はいともまっとうなピアノとテルミンのために作られた「テルミン・ソナタ」です。
その曲を作り、ピアノで彼女と共演しているのが、1984年生まれのピアニスト、作曲家のクリストファー・タルノフです。これは、彼がキャロリナとの共同作業の中で作り上げた2曲の「ソナタ」と、2曲の「インテルメッツォ」の世界初録音のCDです。
それぞれの曲の正式なタイトルには、「テルミンとピアノのための」という言葉が入っています。ここでのピアノ(もちろん、タルノフ自身が演奏しています)は、単なる伴奏ではなく、どちらかというと「主役」を演じているのではというほどの存在感があります。「ソナタ」では、まずはピアノだけの演奏が延々と続き、そこにおもむろにテルミンが入ってくるという感じ、それからは、それぞれの楽器がお互いに目いっぱい主張しあうバトルが展開されています。
いずれの曲も、作風はドビュッシーやメシアンを思い起こさせるようなテイストの和声、というか、モードに支配されたもので、決して古典的な味わいではないものの、いわゆる「現代音楽」と言われていたような日常の音楽体験から遠く離れた要素は皆無で、安心して音に身を任せられる音楽です。それにしても、ピアノの音の多さには、それだけである種の快感が味わえます。
一方のテルミンは、もはやメソッドも、そして楽器そのものも、この楽器が世に出た時代のものからは大幅に様変わりしていることがはっきりわかります。世界初のテルミニストだったはずのクララ・ロックモアの演奏は非常に良い音で録音されたものが残っていますが、それを聴く限りでは例えば普通の弦楽器や管楽器と同じフレーズを演奏している時には「こんなプリミティブな楽器で、よくここまでやれるね」という、ほとんど憐憫の情しか感じられないものが、彼女から2世代ほど経たアイクの場合はもうそんなことは当たり前という境地にまで達するようになっているのですからね。
さらに、ここでは「単音」しか出せないはずのこの楽器から、なんと「2つの音」を同時に出しているという信じられないことを、彼女は「ソナタ」の中で行っています。これについては、CDの中にボーナストラックとして収録されている「Carolina Eyck on Composing for Theremin」という20分程度の映像が、その「謎」を解き明かしてくれています。
彼女は、SNSを多用して、このような映像を日常的に発信しており、これはその中の一つなのですが、ここでは彼女が実際に彼女の楽器「イーサーウェーヴ・プロ」を操りながら、様々な「企業秘密」を惜しげもなく公開しています(別に秘密にしなくてもいーさ)。そこで明らかにされているのが、「エフェクター」の存在です。彼女の足元には、ロック・ミュージシャンさながらのエフェクターがズラリと並び、テルミンの音をさらに豊かで多彩なものに変えているのですね。そんなエフェクターの中に「ハーモナイザー」もありました。これがあれば、単音に音程の異なる音を重ねることができるのです。さっきの「2つの音」は、これで4度や5度上の音を加えていたのですね。
そもそも、テルミンの原理を応用して、そこにキーボードを付けた楽器が「オンド・マルトノ」なのですが、彼女の演奏を聴いているとまるでそのオンド・マルトノとそっくりな音が聴こえてきます。彼女だったら、メシアンの「トゥランガリーラ交響曲」のオンド・マルトノのパートでも、彼女の楽器でやすやすと弾ききってしまえるのではないか、という気がしてきました。もしかしたら、そう遠くない将来に、そんな面白いことをやってくれる日が来るかもしれませんね。

CD Artwork © Genuin Classics
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by jurassic_oyaji | 2016-01-02 20:39 | 現代音楽 | Comments(0)