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ALBERTO GINASTERA
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Karl-Heinz Steffens
Deutsche Staatsphilharmonie Rheinland-Pfalz
CAPRICCIO/C5244




2001年から2007年までベルリン・フィルの首席奏者を務めたクラリネット奏者のカール=ハインツ・シュテフェンスは、在籍中から指揮者としての活動を行っていました。現在のポストは、このCDで指揮をしているラインラント=プファルツ州立フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者です。
シュテファンスと彼のオーケストラは、このCAPRICCIOレーベルに、ドイツランドラジオとの共同制作で「Modern Times」というシリーズのCDを録音しています。今までにツィンマーマン、ダラピッコラ、デュティユーとリリースしてきて、今回はヒナステラです。
アルベルト・ヒナステラは、アルゼンチンのクラシック作曲家としては、ほとんど唯一広く名前が知られている人なのではないでしょうか。もっと有名なのがアストル・ピアソラですが、こちらは「クラシック」というよりは「タンゴ」という単語で語られる方が多いでしょうし。
このCDでは彼の様々な時期の作品が万遍なくちりばめられていますから、ヒナステラ未体験の方にもとても役に立つはずです。なんでも、彼の作品は、作曲された時期によってかなりスタイルが違っているそうなのですね。それは3つの時期に分かれていて、1934年から1947年が「客観的ナショナリズム」、1948年から1957年が「主観的ナショナリズム」、そして、1958年から始まるのが「ネオ表現主義」の時代なのだそうです。
ですから、まず1943年に作られた「クリオールのファウストのための序曲」が、そのような、民族音楽の素材をそのまま音楽の中に用いるという「客観的ナショナリズム」のスタイルによる作品ということになります。これは、アルゼンチンの作家スタニスラオ・デル・カンポが、ブエノス・アイレスのテアトロ・コロンでグノーの「ファウスト」を見た時の様子を方言で書いた「クリオールのファウスト」に、作曲家がインスパイヤされて作られた作品です。この中には、グノーの「元ネタ」と、アルゼンチンの民族音楽が素材として用いられています。
同じ時期、1947年に作られたのが、太陽の息子オランタイについてのインカの伝承を元にした「交響的三部作『オランタイ』」、こちらも、民族的な響きとリズムに支配された作品です。
それが、「主観的ナショナリズム」の時代になると、作風がガラリと変わります。ここでは、民族的な素材は表に出ることはなく、作曲家の中で昇華されて純粋に音楽的なものに変えられているのだそうです。そんな時代、1953年に作られた「協奏的変奏曲」は、テーマもあまり民族色は感じられないものですし、それぞれの変奏で様々な楽器が技巧的なソロを披露するというのも、とてもスマートです。ただ、やはり基本となっているのは「リズム」ですから、根本的にはそんな違いはないような気はします。
ところが、最後の、これが世界初録音となる「歌劇『ボーマルソ』組曲」となると、完全に作風が変わっていることが分かります。完成したのが1967年ですから、もろ「ネオ表現主義」の時代ということになりますが、それはまさにその時代を席巻した「現代音楽」の波に影響された作品に仕上がっているのです。もちろん、シェーンベルク風の無調のテイストも満載ですし、なんと言ってもリゲティやクセナキスなどにも見られるようなトーンクラスターやグリッサンドが、表現の重要なファクターになっていることに驚かされます。ただ、技法的にはそのような「新しい」ものに支配されてはいますが、途中でグレゴリア聖歌の「Dies irae」が聴こえてきたり、オーケストラの中にチェンバロ(モダンチェンバロでしょう)を加えて斬新なサウンドを追求したり、さらに何よりも「リズム」が健在なのが、やはりこの作曲家の根っこが何であるかを気付かせてくれます。
おそらく、シュテファンスの指揮だからそのような違いがより際立って聴こえたのでしょう。さらに、とてもエッジのきいた録音も、聴きごたえがあります。

CD Artwork © Deutschlandradio, Capriccio
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by jurassic_oyaji | 2016-01-19 23:07 | オーケストラ | Comments(0)