おやぢの部屋2
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MOZART/The Weber Sisters
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Sabine Devieilhe(Sop)
Raphaël Pichon/
Pygmalion
ERATO/0825646016259




フランスの新進オペラ歌手、サビーヌ・ドゥヴィエルの新しいCDです。しかしこのドゥヴィエル嬢のかわいらしいこと。歌なんか聴かなくても、このジャケットだけでCDが欲しくなったりしませんか?
バロック・オペラの歌い手として売り出した彼女は、2013年にラモーのアルバムでこのレーベルからデビューしましたが、今回はモーツァルトの「ウェーバー姉妹」というタイトルのアルバムです。モーツァルトの伝記には必ず登場するヨゼファ、アロイジア、コンスタンツェの「ウェーバー三姉妹」、もちろんコンスタンツェは妻、アロイジアはモトカノですが、モーツァルトは彼女たちにそれぞれの思いを込めていくつかの曲を作っています。それらを集めたのが、このアルバムです。
曲目の構成もちょっと凝っています。全体は4つのコーナーに分かれていて、最初は「プロローグ」として4つのトラック、そしてそのあとにそれぞれの女性の名前を付けた3つのコーナーが続きます。それらは、やはり4つずつのトラックが用意されているのですが、なぜか最後のコンスタンツェだけ3つしかありません。なぜなのでしょう?
「プロローグ」では、全体の序曲ということで、「レ・プティ・リアン」の序曲が演奏されています。そこで、この初めて聴く「ピグマリオン」というピリオド楽器のオーケストラの音を味わうことが出来ます。このアンサンブルは、2006年にここで指揮をしているラファエル・ピションによって創設されましたが、元々はバッハの声楽作品を演奏するためのもので、メンバーには合唱団と楽器のメンバーが両方とも含まれています。今ではレパートリーは大幅に拡大されて、あらゆる国のバロックからロマン派の作品が取り上げられています。趣味のよいサウンドで広がるその演奏は、ピリオドとはいっても一部の人にしか受け入れられないような極端な表現は皆無で、とても耳あたりの良いものでした。
序曲に続いて聴こえてきたのが、無伴奏のドゥヴィエル嬢の声。とても澄んだ響きで歌い出したのは、なんとフランス民謡の「Ah, vous dirais-je maman」ではありませんか。いわゆる「キラキラ星」として知られている、モーツァルトが変奏曲を作ったことで有名な歌ですよね。これを、ドゥヴィエルは言葉を大切にしてとてもドラマティックに歌っています。そこにはいつの間にかフォルテピアノの伴奏が入っていましたが、歌が終わると今度はオーケストラも加わって、なんと「パンタロンとコロンビーネ」というパントマイムのための音楽が始まりましたよ。確かにこれは「キラキラ星」とよく似た音楽ですから、無理なくつながります。こんな面白いアレンジを行ったのはヴァンサン・マナックという作曲家。彼のそんなちょっとしたいたずらは、このアルバムの中で何度も登場します。
ドゥヴィエルのすばらしさは、ヨゼファが歌うために作られた、「魔笛」の夜の女王のアリアを聴けば分かります。コロラトゥーラのテクニックは万全、余裕をもって軽々と歌うのは当たり前とばかりに、その難しいフレーズを「エコー」にして繰り返すなどという超絶技巧まで披露してくれますよ。楽しみな新人が現れました。
さっきの、コンスタンツェのコーナーだけトラックが3つというのは、最後のハ短調ミサの「Et incarnatus est」(これも、素晴らしい演奏です)が終わっても「針を上げないで」しばらく待っていると謎が解けます。そこにはもう一つ「隠しトラック」があったのです。それは、合唱も加わって盛大に盛り上げる6声のカノン「Leck mich im Arsch」です。これを「言葉を大切に」歌っているドゥヴィエルの姿には、ある種ブキミなかわいさがあります。そして、この「ド・レ・シ・ド」というテーマから、「ド・レ・ファ・ミ」という、よく似たテーマを持つハ長調の交響曲の終楽章風に仕立て上げたのも、ヴァンサン・マナックの仕事。このアルバムは壮大に「尻をなめて」幕を閉じるのです。

CD Artwork © Parlophone Records Limited
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by jurassic_oyaji | 2016-01-21 21:33 | オペラ | Comments(0)