おやぢの部屋2
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Suliko/Don Kosaken Chor
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Wanja Hlibka/
Don Kosaken Chor Serge Jaroff®
PROFIL/CD PH15034




このタイトル「スリコ」というのは、有名なロシア民謡です。そもそもはグルジアの民謡だったようですが、旧ソ連圏を含めて「ロシア民謡」と呼ばれています。そもそも、「グルジア」も今では「ジョージア」と言わなければいけないのですから、その辺は大雑把で構わないでしょうね。あ、お餅の入ったスイーツではないですよ(それは「シルコ」)。
それよりも、注目したいのはここで演奏している合唱団の名前です。ドイツのレーベルから出たCDなのでドイツ語表記になっていますが、これは「ドン・コサック合唱団」、しかもそのあとに「セルゲイ・ジャーロフ」という名前がくっついていますね。もちろん、これはこういう名前の合唱団を創設し、長年にわたって指揮者を続けていた人物の名前です。というか、ある年代以上の人たちにとっては、「ドン・コサック」といえば「セルゲイ・ジャーロフ」と、まるで「SMAP」と「キムタク」のようにワンセットで認識されている言葉同士でした。
ロシア革命によって祖国を追われたコサックたちを集めて、ジャーロフが男声合唱団を作ったのは、1921年のことでした。その後彼らはアメリカに帰化し、コンサート・マネージャーも付いて世界中でコンサートを開くような有名な合唱団となります。ジャーロフは、1979年までこの合唱団の指揮者を務めていましたが、1985年に亡くなりました。その少し前、1981年に、この合唱団のすべての権利を、マネージャーのオットー・ヘフナーに譲っています。
しかし、ジャーロフの死後、「ドン・コサック合唱団」を名乗る団体がたくさん現れ、「本家」の影が薄くなるという事態が起こります。良くあることですね。しかし、1991年に、オリジナルの「セルゲイ・ジャーロフのドン・コサック合唱団」で12年間ソリストを務めたワーニャ・フリプカが中心となって合唱団が再結成され、2001年にはヘフナーが持っていた権利もフリプカに譲られて、文字通り「直系」の「ドン・コサック合唱団セルゲイ・ジャーロフ®」が世界中で活躍するようになったのです。これは、彼らが2015年の1月に、ドイツの教会で録音したものです。
実は、ジャーロフが指揮をしていた時代のこの合唱団を、実際に生で聴いたことがありました。その時の印象は細かいところはもう曖昧になっていますが、とにかくハイテンションの、ひたすら叫び続けているだけのようなものだったことだけは覚えていました。それが、今回このCDを聴いたことによって、そんなぼんやりとした印象が、いきなり鮮明に蘇ってきたような、不思議な感覚にとらわれました。これを、あの時に聴いていたんだ!みたいな感じでしょうか。
それはもう、今の耳ではとても「合唱」とは呼べないような代物でした。歌っている人たちは、誰一人として他の人と合わせようとはしていないんですからね。ひたすらビブラートたっぷりの声を張り上げるだけ、もちろんアインザッツなんか決まるわけがありませんし、いったいどこがハモっているんだ、という恐るべきものでした。ところが、しばらく聴き続けていると、その中に得も言われぬ魅力が感じられるようになってくるのです。おそらく、ここには本当の意味での「魂の叫び」のようなものがあるのでしょう。そこからはハーモニーやメロディを超えたなにかが伝わってくるのですよ。確かに、それがあるからこそ、この合唱団は1世紀近く世界中の人々を魅了し続けることが出来たのでしょうね。
カラヤンが1966年にチャイコフスキーの「1812年序曲」を録音した時には、冒頭のヴィオラとチェロのアンサンブルによるロシアの聖歌をこの合唱団に歌わせていました。それと同じものが、ここでも歌われています。天空に突き抜けるファルセットのテナーと地を這うようなオクタヴィストのベースはまるで世界を揺るがすよう。カラヤンはここに確かな「ロシアの心」を感じていたのかもしれません。

CD Artwork © Profil Medien GmbH
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by jurassic_oyaji | 2016-01-25 21:17 | 合唱 | Comments(0)