おやぢの部屋2
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LES AUTOGRAPHES VOCAUX
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V. d'Indi, C.-M. Widor, J.-G. Ropartz,
H. Büsser, F. Schmitt, G, Hüe,
A. Roussel, D. É. Ingheobrecht/
l'Orchestre des Concerts Pasdeloup
TIMPANI/1C1201




フランスのマイナーな作曲家のマニアックな曲を専門に録音しているレーベルが、TIMPANIです。ひところクセナキスの作品のCDが大きな話題になったことがありますが、ギリシャ生まれのクセナキスはフランスに帰化しているので堂々と「フランス人」としてここに登場しているのです。
それを日本国内で扱う代理店はかつては東京エムプラスでしたが、2012年の末頃にはナクソス・ジャパンに替わっています。そんなわけですから、交替のゴタゴタでその頃リリースされたアイテムが販売ルートに乗らずに倉庫に眠っているという状況が起きているため、それらを改めて新しい代理店がきちんとインフォを付けて売りさばこうとしているようです。
そんな「在庫処分品」の中に、こんな珍しいものがありました。1930年から1931年にかけて録音された、その当時まだ元気に活躍していた作曲家が自作のオーケストラ曲を指揮した録音を集めたものですが、何よりも貴重なのが、それぞれの演奏の後にその作曲家自身がその曲について語っている声が録音されているということです。
もちろん、その頃はTIMPANIはまだ出来ていませんでしたから、その録音を行ったのはフランスの「パテ」というレーベルです。そもそもは1896年にエミール・パテという人がエディソンのシリンダー式蓄音機をフランスで販売するために作った会社で、そのソフトであるシリンダーの録音も幅広く行っていました。ほどなく、シリンダー式の蓄音機は平板式の蓄音機にとってかわられるようになり、パテも平板、いわゆる「SPレコード」を生産するようになります。ただ、その前にベルリナーが発明していたSPレコードは音の振動を溝に対して「水平方向」に記録するという、その後LPにも引き継がれる方式を取っていたのに対し、パテはあえて、それまでのシリンダーで採用されていた「垂直方向」のカッティングにこだわりました。これは、エディソンが平板方式に転換した時に採用したもので、音信号を上下動に変えてカッティングを行うという方式です。このレコードの再生にはサファイアが先端に付いた針を使用したので、これは「サファイア・ディスク」と呼ばれていました。さらに、このサファイア・ディスクでは、音溝は内周から外周に向かって切られていました。
1927年にはフランスでもそれまでの「アコースティック録音」に替わって「電気録音」が採用されることになります。パテは、この時点では「垂直方向」と「水平方向」を並行して使用していました。
このCDに収録されているのは、パテもすでに世界基準であった「水平方向」のディスクのみを生産するようになったころの音源です。「オーケストラと、声によるサイン」というシリーズのSPの現物から、「板起こし」でトランスファーされたものです。浅草名物ですね(それは「雷おこし」)。ブックレットにはカタログナンバーと、マトリックスナンバーが記されています。ダンディ、ヴィドール、ロパルツ、ビュッセル、シュミット、ユー、ルーセル、アンゲルブレシュトといった錚々たる作曲家たちが指揮をするのは、何も表記はありませんが、当時アンゲルブレシュトが指揮者を務めていたフランス最古のオーケストラ、コンセール・パドルーに間違いないということです。
その、今から85年も前に録音されたものは、サーフェス・ノイズこそうるさいものの、演奏の内容はしっかり味わうことのできるとても素晴らしい音でした。なにより、これらは編集のきかない「一発録り」なので、現場の緊張感まで伝わってくるようです。そして、自作の演奏を終えた直後のそれぞれの作曲家の肉声が、また個性的でうれしくなります。高齢の方が多いのでぼそぼそとしゃべる人が多い中で、ロパルツはとてもはっきりした大きな声、ルーセルは早口でキンキンした声でとても目立ちます。アンゲルブレシュトがまるでオカマのようなしゃべり方だったのも印象的です。

CD Artwork © Timpani
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by jurassic_oyaji | 2016-01-31 19:39 | オーケストラ | Comments(0)