おやぢの部屋2
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HILLBORG/Sirens
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Ida Falk Winland, Hannah Hlgersson(Sop)
Eric Ericson Chamber Choir, Sweden Radio Choir
Sakari Oramo, David Zinman, Esa-Pekka Salonen/
Royal Stockholm Philharmonic Orchestra
BIS/SACD-2114(hybrid SACD)




1954年生まれのスウェーデンの作曲家、アンデシュ・ヒルボリの最新のオーケストラ曲を集めたアルバムです。全4曲、これが世界初録音となります。
1曲だけ2013年の11月に録音されていますが、残りの3曲の録音は2014年の11月です。その時の指揮者がこのオーケストラの首席指揮者のサカリ・オラモなのはわかりますが、さらにエサ=ペッカ・とサロネンという大スターも加わっているというので、ただの録音にしてはなんとずいぶんぜいたくなことでしょう。その前の年に録音された時にはデイヴィッド・ジンマンという、やはり大物も指揮をしていましたし。実はこれは録音場所であるストックホルム・コンサートホールで1986年から開催されている「ストックホルム国際作曲家フェスティバル」というイベントで、2014年にはヒルボリの作品が集中的に演奏されたからです。その時には5つのコンサートで彼の25の作品が紹介されていたのですが、その時に、3曲だけお客さんのいないホールでのセッションによって録音されていたのです。ジンマンもサロネンもオラモも、それぞれが指揮をしている作品の初演を担当した人たちでした。
そんな、言ってみれば「人気」作曲家の作品は、以前こちらで1曲だけ聴いたことがありました。「Mouyayoum」という1985年頃に作られた無伴奏の合唱曲ですが、これがもろスティーヴ・ライヒの作品のモティーフをそのまま流用したものであるのに驚いたことがあります。どうせパクるならもっとうまくやったらいいのに、と。
ですから、今回のアルバムのメインタイトルにもなっている、2011年に作られた演奏時間33分という最も大きな作品「Sirens」の中に、やはり同じライヒの、例えば「Music for 18 Musicians」の基本的な要素である細かいパルスが登場していたのを聴いたときにも、「まだこんなことをやってるなんて」という正直な気持ちが沸き起こったのは当然のことです。
LAフィルとシカゴ交響楽団からの共同委嘱で作られ、サロネンによって初演されたというこの作品は、編成も大規模、大オーケストラにソプラノ歌手二人と混声合唱が加わります。弦楽器のとても繊細なクラスターに乗って合唱が歌い出した時には、それはまるで20世紀半ばの「シュプレッヒ・ゲザンク」のような雰囲気を持っていました。子音だけでささやかれるひそひそ声は、なにかとても懐かしい、往時の「現代音楽」をしのばせるものでした。しかし、その合唱は次第に柔らかさを増し、何か癒されるような穏やかなものに変わります。そこにソプラノのソリストが2人、お互いに右と左のかなたから呼び交わすというシーンが始まり、そこにはまるで21世紀のアルヴォ・ペルトの世界が広がります。
ライヒの模倣が始まるのは、12分ほど経ったあたり。それは確かにそれまでの音楽との対比を見せるものでした。おそらく、この作曲家の中では、もはやこの様式はほとんど自分の中に同化しているのでしょうね。
彼の中に「同化」しているのは、ライヒだけではありません。ここで演奏しているロイヤル・ストックホルム・フィルとイエテボーリ交響楽団、さらには北ドイツ放送交響楽団という3者からの委嘱で作られ、おそらく先ほどの作曲家フェスティバルで初演されたであろう2014年の作品「Beast Sampler」では、なんとクセナキスやリゲティのまさに「野獣的」なサウンドがそのまま「サンプリング」されているではありませんか。正直、それらはオリジナルの表面的な過激さだけを模倣したに過ぎない、「換骨奪胎」そのものの仕上がりです。
ここでは、SACDならではのとても澄み切った弦楽器の響きの中で、かつては「前衛」と言われていたイディオムたちが、「ネオ・ロマンティック」とでも言えるなんともくすぐったいテイストに丸め込まれてしまう様を味わうことができます。この時代の、ある意味最先端の「現代音楽」がこんなものだなんて、どうかしています。

SACD Artwork © BIS Records AB
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by jurassic_oyaji | 2016-02-04 23:18 | 現代音楽 | Comments(0)