おやぢの部屋2
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ROTH/A Time to Dance
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Grace Davidson(Sop), Matthew Venner(CT)
Samuel Boden(Ten), Greg Skidmore(Bas)
Jeffrey Skidmore/
Ex Cathedra
HYPERION/CDA 68144




イギリスの合唱団「エクス・カテドラ」の最新アルバムです。歌っているのは、この合唱団とは縁の深いアレック・ロスという人の作品です。
ドイツ人とアイルランド人の血を引くロスは、1948年にマンチェスターのそばで生まれました。音楽や指揮法を学ぶのと同時に、ジャワの「ガムラン」も学んでいたというあたりがユニークな経歴なのでしょう。そのガムランの要素はおそらくこの作品の中にも顔を出しているはずです。
アルバムタイトルとなっている、2012年に初演された「Time to Dance」という、演奏に1時間以上かかる大曲は、ドーセットの「サマーミュージックソサエティ」というイベントの創立50周年を記念するために委嘱された作品で、初演はこのCDと同じ団体によって行われています。
曲全体は「春」、「夏」、「秋」、「冬」という四季からできていて、それに全体の導入の曲と、最後のエンディングが加わりはるなつ(はります=京都弁)。それぞれの部分は非常に短い、せいぜい3分ほどの「歌」がたくさん集まって成り立っています。
その1曲目に現れたのが、まさにガムランで用いられるような金属打楽器でした。音程はあるのだけれど、西洋音楽とは間違いなく隔たっているそのピッチと音色に導かれて、まずは「バス」というにはあまりに明るく澄み切った声のソリストが「To every thing there is a season, and a time to every purpose under the heaven」という、「伝道の書」からの引用を歌い始めます。それに続いて、左側の遠くの方から女声合唱が、さらには右側の遠くからは男声合唱が聴こえてきます。これは、おそらく録音でその音場を作っているのでしょうが、言葉が分からないほどモヤモヤとした合唱が遠くから次第に近くに迫ってきて、遂にはその言葉もはっきりと聴こえるようになるという設計が、とても見事に実現されています。まるで、映画の幕開けのような、それは素晴らしい演出でした。
その合唱の声が、今まで何度か聴いてきたこの合唱団のものとは一味違います。特に男声が、以前はちょっと野暮ったかったものが見事に垢抜けしてすっきりしたものに聴こえます。イギリスの合唱団の常で、おそらくメンバーが大幅に変わっているのでしょう。
そのあとに、まさにさまざまな時代の詩人のテキストによる「歌」が始まります。ソロあり、合唱あり、バックのオーケストラも金管で盛り上げたり弦楽器でしっとり聴かせたり、木管のソロがちょっとした粋なフレーズを吹いたりと、とてもヴァラエティに富んだ音楽が続きます。しかし、そのシンコペーションをきかせたダンサブルなテイストは、同じ世代のイギリスの作曲家、ボブ・チルコットに非常によく似たものでした。チルコットにほんの少しエスニックな味付けをすればこのロスになるのでは、という感じ、そこには難解さとは無縁な世界が広がりますから、深く考えずにそのリズムとキャッチーなハーモニーに身を任せるというのが、相応の聴き方になるのではないでしょうか。
「春」では生き生きとした曲が続きますが、「夏」になると、まるでボサノヴァのようなけだるい音楽が始まります。そして「秋」のパートでは、なんとヴィヴァルディの「四季」の中の「秋」からの引用がオーケストラの中に現れます。こんなこともできる作曲家だったんですね。「冬」でも、ヴィヴァルディばりに「炉辺で火を囲む」みたいな情景が歌われたりしています。
このアンサンブルは、合唱とオーケストラでワンセットになっています。そのオーケストラのメンバーの中に、最近ちょっと気になっているフルートのケイティ・バーチャーの名前がありました。あまり目立ったソロはありませんが、ちょっとくすんだ音色(もしかしたら木管?)で、的確な味付けをしていましたね。
エンディングを飾る終曲のとてもリズミカルなノリには、思わず一緒に手拍子を打ちたくなってしまうほどでした。きっと生で聴いたらとても楽しめる曲なのでしょう。

CD Artwork © Hyperion Record Limited
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by jurassic_oyaji | 2016-02-16 23:19 | 合唱 | Comments(0)