おやぢの部屋2
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SIBELIUS/Swanwhite
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Riko Eklundh(Narr)
Leif Segerstam/
Turku Philharmonic Orchestra
NAXOS/8.873341




セーゲルスタムのシベリウス劇音楽全集、今回は「白鳥姫」を中心としたアルバムです。
これはスウェーデンの作家アウグスト・ストリンドベリが1901年に、30歳年下の婚約者、女優のハリエット・ボッセのために作ったおとぎ話風の戯曲です。なかなか粋なことをするな、と思うかもしれませんが実はこれがストリンドベリの3度目の結婚で、それも3年後には破局を迎えるのですから、複雑です。もっとも、ボッセの方もそれからさらに2度他の男と結婚するのですから、まあいいんじゃないですか。
しかし、そんな彼女がこのシベリウスの劇音楽を産むきっかけとなっていたのですから、面白いものです。ボッセは、1905年にシベリウスが音楽を担当して上演されたメーテルランクの「ペレアスとメリザンド」で、メリザンドを演じていたのです。彼女は公演の間中、「メリザンドの死」の場面で流れる音楽の素晴らしさに、ベッドに横たわって涙にくれていたといいます。そこで彼女は、もう別れていたストリンドベリに、先ほどの、まだ実際にステージで上演されたことのない「白鳥姫」でもシベリウスに音楽を付けてもらったらいいんじゃない?と進言しました。
それはすんなり実現することはありませんでしたが、最終的にスウェーデン劇場の委嘱という形で、1908年の4月に上演が行われます。その後、1909年には、演奏会用の組曲もシベリウス自身の手で作られます。
劇の主人公「白鳥姫」は、侯爵の娘ですが、母親は実は白鳥だったという、不思議な設定、その侯爵の後妻は3人の連れ子がいるというのは、なんだか「シンデレラ」に似ていますね。姫は遠くの若い国王との婚約が決まっているものの、その国王がよこした家庭教師である王子と恋に落ちます。そこに待っていたのは悲しい結末、しかし、愛の力ですべては救われるというお話です。
このCDで聴けるのは、組曲版ではなく、最初の劇場音楽のバージョンです。この頃の演劇の「劇伴」は、もちろん今のように録音したものを使うわけではなく、「生」のオーケストラが演奏していたのですが(指揮はシベリウス自身)、オペラではないのですからそんなに大編成のオーケストラを使うわけにはいかないでしょうね。これを聴いてみても、弦楽器はかなり少ない人数のような気がしますし、それ以外の楽器もフルートとクラリネットとホルンが1本ずつ、それにティンパニという、非常にシンプルな編成です。「ハープを弾きましょう」というタイトルのナンバーでも、そこで実際に演奏されているのは「ハープ」ではなく、ハープを模倣した弦楽器のピチカートだったりします。
音楽は、そのような「おとぎ話」にふさわしい、とても親しみやすいもので、何かグリーグのようなテイストも見られます。例えば第2幕の「継母:花嫁はどこに行ったの?」というナンバーなどは、「ソルベーグの歌」を思わせるようなメロディとエンディングの味付けです。デミグラスソースで(それは「ハンバーグ」)。そして、第3幕の終わりに演奏される大団円の音楽は、弦楽器の朗々たるコラールが愛の力を高らかに歌い上げる壮大な音楽です。
ところで、第3幕の初めに演奏される「白鳥姫」というナンバーは、弦楽器のピチカートとフルートのスタッカートが印象的ですが、これはのちに交響曲第5番の第2楽章(現行版)に転用されることになります。
これをコンサート用の組曲版に直した時には、シベリウスはオーケストラを普通の2管編成に拡大し、打楽器もカスタネットやトライアングルを加えました。それによってオーケストレーションは全く別のものに変わりましたが、それ以上に曲の構成自体が大幅に変更されています。このジャケットの写真は孔雀ですが、それは7曲から成る組曲版の最初の曲のタイトルの「孔雀」に由来しているのでしょう。しかし、こちらのタイトルは「鳩」、それはフルートとクラリネットのユニゾンで執拗に繰り返されている「E」の音で表現されているのでしょう。組曲版では、姫のペットの孔雀がついばむ音が弦楽器のピチカートとともにカスタネットで描写されていますが、劇音楽版ではもちろんカスタネットはありませんし。
by jurassic_oyaji | 2016-02-21 00:08 | オーケストラ | Comments(0)