おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
上野耕路/NHK土曜ドラマ「逃げる女」オリジナルサウンドトラック
c0039487_21540711.jpg




大井浩明(Pf, OM, Keyboards)
NHK/NGCS-1063




上野耕路さんという作曲家の名前は、映画やドラマの音楽でよく目にしていました。最近では「MIRACLE デビクロくんの恋と魔法」とか「マエストロ!」の音楽を担当されていましたね。
そんな上野さんが担当したテレビドラマの音楽に、ピアニストの大井浩明さんが参加しているという情報を、ご本人からの情報メールによって知ることが出来ました。大井さんと言えば、かつてクセナキスの難曲「シナファイ」を見事に弾ききったピアニストとしてほとんどアイドル的な存在でしたが、最近では例えば一柳彗のピアノ曲全曲演奏とか、やはり精力的に「秘曲」の発掘など精力的な活動をなさっているようです。
その大井さんのメールによれば、そのドラマの音楽ではオンド・マルトノも弾いていたというのですね。かつてN響でデュトワがメシアンの「神の降臨のための3つの小典礼」を演奏した時にオンド・マルトノを演奏されていたので、こんな楽器まで演奏しているんだ、と思ったものです。
ですから、大井さんの最近の演奏、中でもオンド・マルトノによるものを聴いてみたかったので、そのドラマのサントラ盤を入手してみました。まずクレジットをチェックして驚いたのが、そのオンド・マルトノが日本で作られていたということです。それは、「浅草電子楽器製作所」という、まるで「下町ロケット」にでも登場するような社名の会社でした。モーリス・マルトノが作ったこの楽器は、彼のアトリエでずっと作られ続けていたのですが、最近はもはや新しい楽器を作ることが出来なくなっていたということで、そんな日本の会社に背中を借りるようになっていたのでしょうか(それは、「オンブ・マルトノ」)。
サントラを作っている上野さんというのは、かつては「ゲルニカ」というバンドをやっていたそうです。戸川純という、今だと椎名林檎みたいな悪趣味なヴォーカルが参加してましたね。歌は大っ嫌いでしたが、音楽そのものは適度に尖がっていてなんか気になるバンドでした。その上野さんが、今では映画音楽になくてはならない人となっているようで、こんな形でその音楽を面と向かって聴くのはとても楽しみでした。
演奏しているメンバーは、木管五重奏プラス弦楽五重奏という、基本クラシックのユニットと、ドラムスやパーカッションのリズム隊、そこに、大井さんのピアノやキーボードがほとんどの曲で加わるという編成です。想像していた通り、サティとかメシアンを思わせるようなテイストがプンプン感じられるような音楽が、まずベースになっているような気がします。メイン・テーマとかエンディング・テーマのような、はっきりとしたコンセプトを示す必要のある曲では、そういう感じのメロディアスな作り方がされているようでしたね。そのエンディング・テーマで登場するのが、オンド・マルトノです。6/8の拍子に乗って、美しいのだけれどどこか醒めたところのあるメロディが、最初にオンド・マルトノのソロで歌われます
その他にも、それとは全くテイストの異なる曲も用意されているというのは、ドラマのシーンによってさまざまに使われるような「需要」を満たすものなのでしょう。中には、ゴングやスティールパンなどのパーカッションだけで演奏されているものもあって、音だけで聴くとそれがほとんどメシアンのように聴こえるのが面白いところです。
実は、このドラマは見てはいなかったのですが、これを聴いてあわててまだ放送されていた最終回だけを見てみました。そうなると、音楽が見事に主張をかくしてドラマに奉仕し始めているのがよく分かります。これはなかなかのセンスではないでしょうか。ただ、これはある意味サービス精神の表れなのでしょうが、トラック13の「絶望」というタイトルの曲は、あまりにいかにもな甘ったるさで、ちょっとがっかりさせられます。

CD Artwork © NHK Publishing Inc.
[PR]
by jurassic_oyaji | 2016-02-22 21:57 | 現代音楽 | Comments(0)