おやぢの部屋2
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1615 Gabrieli in Venice
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His Majestys Sagbutts & Cornetts
Stephen Cleobury/
The Choir of King's College, Cambridge
CKC/KGS0012(hybrid SACD, BD-A)




ケンブジッジ・キングズ・カレッジ聖歌隊の自主レーベルは、スタート時はSACDでのリリースでしたが、最近ではノーマルCDのものも混ざるようになっていたので、やはりそれほどハイレゾにはこだわっていないのかな、と思っていたら、いきなりSACDとBD-Aのカップリングという、まるで2Lのようなことをやってくれました。そのBD-Aでは、おそらく史上初めてとなるのでしょうがこれまでの2チャンネルステレオ、5.1サラウンドに加えて、「ドルビーアトモス」のフォーマットも選択できるようになっています。「ドルビーアトモス」というのは映画館でのさらなる音響再生のために開発されたもので、なんでも音場を垂直方向に拡大したもののようですが、しかるべき再生装置を用いればそれがご家庭のお茶の間でも実現できるようになったのですね。どうでもいいことですが。
さらに、「mShuttle」によって、各種の音源ファイルをダウンロード出来るようにもなっています。その最上位フォーマットは、録音時に用いられた24bit/96kHz or 192kHzのFLACです。なぜ2種類のサンプリングレートなのかは、録音の時期によってフォーマットが変わっているからです。いまいち意味が分かりませんが、2015年の1月のセッションでは192kHzだったものが、同じ年の6月のセッションでは96kHzになっています。ただ、BD-Aでは全てのトラックが96kHzになっているようです。
そんな「大盤振る舞い」になったのは、このアルバムタイトルの「1615」に関係があるはずです。もちろんこれは年号ですが、なんでも録音時からちょうど500年さかのぼったこの年には、ここで演奏している聖歌隊のホームグラウンドであるキングズ・カレッジのチャペルが出来たのだそうです。そして、同じ年に、ヴェネツィアで大活躍した作曲家ジョヴァンニ・ガブリエリの楽譜が出版されたそうで、その楽譜の中に入っている作品がここで演奏されているのです。作曲家自身はその3年前に亡くなっていますから、この楽譜は死後に出版されています。
その楽譜は2種類ありました。一つは「シンフォニエ・サクレ」というタイトルの、宗教曲を集めたもの、もう一つは「カンツォーネとソナタ」という、器楽アンサンブルの曲集です。ガブリエリはその両方の分野で膨大な作品を残していたのでした。琴奨菊は、これで膨大な白星を重ねました(それは「がぶり寄り」)。
そのどちらの作品にも、ちょっとなじみのない名前の楽器が使われています。それは、コルネット、サックバット、そしてドゥルツィアンという楽器です。「コルネットなら知ってるぞ!」という方もいらっしゃるかもしれませんが、これは、その、トランペットをちょっとかわいくしたような形の楽器とは全くの別物で、マウスピースは金管楽器のものですが、胴体は多くの穴が開いた「縦笛」のような形をしている、この時代にしか使われなかった楽器のことです。そして、サックバットはトロンボーンの、ドゥルツィアンはファゴットのそれぞれ前身となる楽器です。
とても広々としたチャペルの中で行われた録音では、そんな珍しい楽器、特にコルネットの鄙びた音色と歌いまわしが手に取るように味わうことが出来ます。サックバットの重厚な和音も魅力的、ドゥルツィアンはたった2曲にしか登場しませんが、その独特の低音はすぐに分かります。
それに対して合唱は、録音が良すぎるせいか、かなりアラが目立ちます。特にソリストたちの声が全然統一されていないのがとても聴きづらいものですというのも、多くの曲でバリトンのソロを担当している人が全然周りに溶け込まないダミ声なんですね。ビブラートも強烈ですし。なんでこんな人がソロを、と思ってしまいます。これを聴いて思い出したのが、同じ聖歌隊出身でキングズ・シンガーズのメンバーでもあったボブ・チルコットでした。彼の声もグループの中ではこんな感じ、こういうのもキングズ・カレッジの「伝統」なのでしょうか。

BD-A Artwork © The Choir of King's College, Cambridge
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by jurassic_oyaji | 2016-02-26 20:37 | 合唱 | Comments(0)