おやぢの部屋2
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World of Percussion
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Thierry Miroglio(Perc)
NAXOS/8.573520




毎月膨大な数の新譜をリリースしているこのレーベルですが、そのほとんどのものが全く聴いたことのない作曲家の作品だ、というのは驚くべきことです。CDが売れなくなってきていると言われて久しい昨今ですが、このようにこれまで全く顧みられることがなかった作曲家の紹介を続けるうちには、きっととんでもないヒットを呼ぶ宝物を探し当てることができるかもしれませんね。ま、できないかもしれませんが。
この「パーカッションの世界」というCDに収められている6人の作曲家の、それぞれこれが世界初録音となる作品を聴いていくと、もしかしたら次第にそういうものでも聴いていて楽しい気持ちにさせられるものがあることに、気づくことがあるかもしれません。もしそうだとしたら、まずここで演奏されている曲の半分には打楽器だけではなく「エレクトロニクス」も加わっていることに、その要因があることを否定するわけにはいかないのではないでしょうか。実際には、ここでの表記は「electronics」だったり「chamber electronics」だったり、あるいはそっけなく「computer」というものですが、それらは全く同じ「コンピューターで作った電子音」のことです。ですから、このアルバムのタイトルからはちょっと「反則」気味のところがあるのですが、まあそれは我慢していただくしかありません。
しかし、そうは言っても、1曲目のブルーノ・マントヴァーニの作品「Le Grand Jeu」は、聴いていてあまり気持ちがいいものではありませんでした。タイトルにある「Grand Jeu」というのは、フランスのオルガンのパイプ(ストップ)の名前で、リード管の一種、これをタイトルにして、そのストップで演奏することを指定している曲がバロック時代にはたくさんありました。しかし、これは「エレクトロニクス」の何とも刺激的な音色とフレーズがやかましすぎて、眼前にはゾンビや食虫植物のようなものがクローズアップで現れてきますから、気持ち悪いのなんのって。
しかし、2曲目のマルコ・ストロッパの「Auras」という曲は、うってかわって繊細な世界が広がるものでした。こちらはいたずらに「チェンバー・エレクトロニクス」に頼ることはなく、例えばヴィブラフォンの鍵盤を弓でこすったりして、まるでグラス・ハーモニカのような音を出すような、とてもしっとりとした味わいを楽しめます。この作曲家と、そしてそれを演奏しているティエリー・ミログリユは、打楽器には暴力的な面があると同時に、しっとりとした抒情性までも表現できるほどの幅広さもそなえているのだ、ということを身をもって知らしめているのかもしれません。
3曲目は、指揮者としても有名なハンガリーの作曲家、ペーテル・エトヴェシュの「Thunder」です。これは、ティンパニだけによって演奏されている作品です。この楽器はペダルを使うことによって連続的にピッチを変えることが出来ますから、そんな機能を縦横に使って、ただの「雷鳴」だけではない、もっと多彩な表現を追求しています。
4曲目は、今度はヴィブラフォンだけによる演奏でやはり往年の指揮者として有名だったこの中では最年長、もちろん物故者のルネ・レイボヴィッツの「3つのカプリース」です。1966年に作られた作品で、当時はクラシックとしてはとても珍しいこの楽器のソロのための曲でした。ここでは、「打楽器」というよりは、単に「鍵盤楽器」として、今では死に絶えた「12音」による無調の世界が堪能できます。
5曲目、フィリップ・エルサンの「3つの小さなエチュード」もティンパニのためのもの。なんでも、ゲーテの「ファウスト」を素材にしたベルリオーズとシューベルト、そしてグノーの3つの作品を「元ネタ」にしているというものです。グノーの「兵士の合唱」だけはとても平易な引用で、よく分かりました。
最後のジャン=クロード・リセの「Nature contre Nature」は、やはり「コンピューター」が加わっていますが、遊び心にあふれた機知に富む作品でした。

CD Artwork © Naxos Rights US, Inc.
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by jurassic_oyaji | 2016-02-28 22:43 | 現代音楽 | Comments(0)