おやぢの部屋2
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BACH/Messe in h-moll
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Maria Stader(Sop), Hertha Töpper(Alt)
Ernst Haefliger(Ten), D. Fischer-Dieskau, Kieth Engen(Bas)
Karl Richter/
Münchener Bach-Chor
Münchener Bach-Orchester
ARCHIEV/UCGA-9007/8(single layer SACD)




カール・リヒターが1960年前後にARCHIVへ録音したバッハの4つの宗教曲がシングル・レイヤーSACDになってリリースされました。その中から1961年録音の「ロ短調」だけ買ってみました。2枚組で税込6,912円という超高額商品ですが、演奏時間が197分47秒の「マタイ」などは2枚のSACDなら218分まで入るものを3枚組にして税込10,368円ですから、もはやぼったくりです。
ネットでこのジャケットを見た時には、感激ものでした。しかし、届いてみたら、SACDのボックスが横長なので、正方形のジャケットをそのままおさめるために左右の余白が帯と同じ色に彩色されてました。これをデザインした人はアホです。せめて、ブックレット(これは正方形)でもきちんとこのボックスのミニチュアにでもなっていれば許せますが、これはなんとモノクロの印刷で曲名が書いてあるだけです。さらに、その中のライナーノーツが例によって大昔のCDに使われていた原稿の使いまわしですから、ひどいものです。この価格で、こんな貧乏くさいブックレットはないでしょう。しかも、その原稿には、とんでもないミスプリントがありました。こんなお粗末な間違いは誰かが気が付いているはずなのに、この業界は絶対直そうとはしないんですね。それは10ページの左の段の下から6行目の「1968年」という年号です。それが新バッハ全集としてこの曲が出版された年とされていますが、これは間違い、本当は「1955年」です。
なぜ、そんなことにこだわるかというと、その年号が、このジャケットに関係があるからなのです。1955年に出版された楽譜によって校訂者が示したのは、「ロ短調ミサは統一的な作品とみなすべきではない」(ライナーより引用)という見解でした。したがって、曲名も作られた時期が同じものだけをまとめて、「Missa」、「Symbolum Nicenum」、「Sanctus」、「Osanna, Benedictus, Agnus Dei et Dona nobis pacem」という4つの部分に分けるべきだ、と主張したのです。それを真に受けてARCHIVがデザインしたのが、このジャケットのロゴなのです。この、当時は「学究的」だと思われていたレーベルは、ここぞとばかりに「新説」をジャケットに反映させたのですね。親切心の表れでしょうか。
つまり、このLPがリリースされたのが1962年ですから、「1968年」に出版されたのでは、こんなジャケットが出来るわけがないのですよ。ですから、このミスプリントをこれまで訂正しなかったユニバーサルミュージックは、レーベルに対しても、そして執筆者の磯山雅さんに対しても謝罪が必要です。
ただ、そんなレーベルの思惑とは裏腹に、リヒターがこの録音のために使った楽譜はその新バッハ全集ではなかったのは、なんとも間抜けな話です。さらに、その「新説」も、今では完全に否定されていて、このようなタイトルは全く意味をなさなくなっているのですから、その間抜けさはさらに募り、このジャケットはそういう意味で「歴史的」な価値を持つことになりました。
音は、そもそもマスターテープの段階でかなりの歪みが入っていて、クオリティはかなり低いものです。冒頭の「Kyrie」などは聴くも無残なことになっています。それでも、弦楽器の音などはCDとは全然違って、肌触りまでがきっちり感じられます。合唱も、本当に静かな、「Qui tollis peccata mundi」などでは、びっくりするようなピュアな響きが味わえます。SACDによって、ワンランク上がった音を体験出来るのは間違いありません。それが価格に見合ったものなのかは微妙ですが。
リヒターの演奏様式は、そもそも旧バッハ全集を使っていたという点で現在の主流とはかけ離れたものですが、そんな外見上の些事を超えたとても熱い思いを感じることが出来ます。低速で丁寧に歌い上げられた合唱のメリスマからは、それが単なる記号ではなく、一つ一つの全ての音に意味があることを教えられます。そして、ヘルタ・テッパーの歌う「Agnus Dei」に涙しない人など、いないのではないでしょうか。

SACD Artwork © Deutsche Grammophon GmbH
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by jurassic_oyaji | 2016-03-01 23:51 | 合唱 | Comments(0)