おやぢの部屋2
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Vox Balaenae
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TrioWiek:
Christina Fassbender(Fl)
Justus Grimm(Vc)
Florian Wiek(Pf)
PROFIL/PH12013




フルート、チェロ、ピアノという、決してレパートリーは多いとは言えない楽器の組み合わせの三重奏が4曲収められています。
タイトルの「ヴォクス・バレナ」というのは、ラテン語で「クジラの声」という意味です。1929年生まれのアメリカの作曲家、ジョージ・クラムの作品のタイトルから取られました。最近ではあまり名前を聞くことはなくなりましたが、ある時期にはかなりの人気を博した「現代作曲家」ですね。この、彼の1971年に作られた作品を演奏する時には、このジャケットにあるように演奏者は全員黒いマスクをつけて顔が分からないようにしたうえで、薄暗い中で青い照明を受けて演奏するように指示されているのだそうです。いかにも、あの時代の「現代音楽」の残渣を見る思いですが、今となってはそんなこけおどしが通用するわけもなく、これは単なるデザイン上の遊びとして使われているだけです。
実際に彼らがこれを録音している場面の写真はインレイで見ることが出来ますが、そこでは彼らは普通に顔を出して演奏をしていました。それよりも、そこでのピアニストは鍵盤ではなく直接グランドピアノの中の弦を叩いているようですし、フルーティストの横にはサンバル・アンティークのセットが用意されていますから、サウンド的にかなりユニークなものが期待できます。
そもそも、この作品にはPAが欠かせないものとなっていました。単に音を大きくするだけではなく、エコーを加えたり変調を行ったりという、様々なエフェクターとしての要素も求められていたのです。そんな設定で、この「クジラの声」という壮大な作品は始まります。文字通り、作曲家はザトウクジラの鳴き声を録音したテープを聴いてインスパイアされたという通り、それはそんな水棲哺乳類の、単に鳴き声だけにはとどまらない、巨大な体躯までもが連想されるようなスケールの大きさでした。
さらに、この作品では、その「クジラ」のテーマから変奏曲が作られています。それは、この地球に生命が生まれたとされる「始生代」から始まって、「原生代」、「古生代」、「中生代」、「新生代」と続く太古の年代がタイトルとなっている通り、まさに「地球の歴史」を描いたものなのです。正直、その曲のどのあたりから「始生代」が始まるかは全く分からなかったのですが、まあ、その姿勢だけは受け取っておきましょうね。
これは、メインプログラムということでCDの最後に入っていますが、最初に演奏されているのが、やはりクラムと同じ世代のアメリカの作曲家、ネッド・ローレムの「フルート、チェロとピアノのためのトリオ」です。4つの古典的な楽章から出来ていますが、その音楽は型にはまらないなかなか魅力のあるものでした。特にフルートは、1楽章の頭からとても華やかなソロが登場して、フルーティストはそのテクニックを問われることになります。ここ演奏している「トリオ・ヴィーク」のメンバーのクリスティーナ・ファスベンダーは、師であるマイゼンやニコレ譲りのとても渋い音色とテクニックで、それに見事に応えています。それ以降は、かなりジャジーでリズミカルなところが現れて、アンサンブルの確かさも存分に楽しめます。
次の、フィンランドの作曲家サーリアホの1998年の作品「アルト・フルート、チェロとピアノのための『灰』」は、この作曲家ならではの妥協を許さない厳しい音楽です。アルト・フルートは、肉声も交えた特殊奏法が光りますし、ピアノはおそらくプリペアされているのでしょう、不思議な音響も混ざります。
そんな中で、マルティヌーの「トリオ」を聴くと、これが作られたのが1950年だということが信じられないほど、そのロマンティックな書法が際立ちます。同じ作曲家の「フルート・ソナタ」ととてもよく似た親しみやすさがあります。ファスベンダーは、ここではローレムの時とは別人のように甘ったるい演奏を繰り広げています。
それにしても、ジャケットでミスプリとは。

CD Artwork © Profil Medien GmbH
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by jurassic_oyaji | 2016-03-07 20:34 | フルート | Comments(0)