おやぢの部屋2
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Manhattan Intermezzo
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Jeffrey Biegel(Pf)
Paul Phillips/
Brown University Orchestra
NAXOS/8.573490




最近、音楽の世界で一時代を築いた人たちが相次いで亡くなっています。そして、キース・エマーソンまでもが亡くなってしまいました。なんでも演奏能力の低下を嘆いた末の自殺(あくまで推測)だとか。同じような悩みを抱えていながら、図太く醜態をさらしているミュージシャンは山ほどいるので、キースの場合は潔いと言えるのかもしれませんが・・・。
彼が亡くなるほんの数週間前にリリースされたのが、彼が1976年に作った純クラシックの作品「ピアノ協奏曲第1番」を含むこのアルバムだったというのは、なんという偶然でしょう。もちろん、これを扱っている代理店もこれをビジネス・チャンスとばかりに宣伝に余念がありません。
アルバムタイトルは「マンハッタン・インテルメッツォ」。これはあのかつてのヒットメーカー、ニール・セダカが作った「クラシック」の作品です。そのように、ここにはポップス、ロック、そしてジャズが「本職」の人たちが作ったピアノとオーケストラのための作品が集められています。
まずは、もしかしたらもう忘れられているかもしれない1950年代から60年代にかけて一世を風靡した作曲家でシンガーのニール・セダカです。ブリーフ1枚にはなりませんから、安心してください(それはハダカ)。当時はコニー・フランシスが歌った「Where the Boys Are(ボーイハント)」や、ニール自身が歌った「Calendar Girl(カレンダーガール)」を日本語でカバーしたものが全国のお茶の間で流れていたはずです。
「マンハッタン・インテルメッツォ」は、ピアノも上手だったニールがオーケストラをバックにピアノを演奏して録音するために2008年に作られました。オーケストレーションを行ったのはリー・ホルドリッジです(オーケストラはロンドン・フィル)。この録音は2012年にリリースされた「The Real Neil」の最後に収録されています。今回これを再録音するにあたっては、ピアノのパートはここで演奏しているジェフリー・ビーゲルによってより華麗に書き直され、一層「クラシック」っぽい仕上がりになっているはずです。なんと言っても、次々に現れるキャッチーなメロディには酔いしれてしまいます。まさにヒットメーカーとしてのニールの底力を見る思いです。
そして、キースの「ピアノ協奏曲第1番」は、それとは対極的な、やはり「ロック精神」満載のヘビーな曲でした。なんたって、第1楽章のテーマは「12音」で作られているのですからね。ですから、こういうものを演奏するためにはピアニストはもちろん、オーケストラのスキルもかなり高くないことには満足のいくものにはなりえないのですが、ここでの学生オーケストラは最悪です。その「12音」の音取りすらまともにできていないのですからね。いや、このオーケストラはニールの曲でも木管のピッチは悪いし、打楽器のリズムは悪いしと、全然いいところがありません。
第2楽章はちょっとかわいらしく迫りますが、第3楽章になったらやはり今度はバルトーク風に野性味満々で突き進みます。
残りの2曲は「ジャズ」とのコラボ。デューク・エリントンの「New World a-Comin'」は、1943年に彼のピアノとビッグバンドのために作られた曲ですでに楽譜はなくなっていたものを、1988年にモーリス・ペレスが復元してシンフォニー・オーケストラのために編曲しなおしたバージョンです。その時のソリスト、ローランド・ハナが即興的に演奏したカデンツァを、やはりビーゲルはコピーしています。これは、やはりオーケストラではなくビッグバンドで聴いてみたいものだ、と強烈に思いました。少なくとも、このオーケストラではジャズならではのグルーヴは全く感じられません。
そして、おなじみ、ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」で締めくくられます。これも、ピアニストだけがいくら張り切っても、オケとの対話が成り立たないことには真の名演にはなりえないことが証明されてしまっているだけです。

CD Artwork © Naxos Rights US, Inc.
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by jurassic_oyaji | 2016-03-17 23:19 | 室内楽 | Comments(0)