おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
RUSSIAN DANCES
c0039487_23111376.jpg



山田和樹/
Orchetre de la Suisse Romande
PENTATONE/PTC 5186 557(hybrid SACD)




すでに日本を代表する指揮者となっている山田和樹さんの現在のポストはというと、スイス・ロマンド管弦楽団首席客演指揮者、モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団首席客演指揮者(2016年9月からは音楽監督兼芸術監督)、日本フィルハーモニー交響楽団正指揮者、横浜シンフォニエッタ音楽監督、仙台フィルハーモニー管弦楽団ミュージック・パートナー、オーケストラ・アンサンブル金沢ミュージック・パートナー、東京混声合唱団音楽監督兼理事長という膨大なものになっています。やはり小澤征爾から続く「ブザンソン・ウィナー」という経歴は、間違いなく大指揮者への切符となっているのでしょう。
中でも、オーケストラと並んでプロの合唱団の指揮者としても活躍している、というあたりが目を引きます。そう言えば、デビューしたばかりの小澤征爾も、この合唱団を指揮していましたね。ミュージック・パートナーを務める仙台フィルとのプログラムでも、今年の定期演奏会と特別演奏会ではいずれも「エリア(メンデルスゾーン)」と「カルミナ・ブラーナ(オルフ)」という、大規模な合唱を伴う曲目が選ばれています。
さらに、やはり仙台フィルと昨年行われたコンサート形式の「椿姫」を皮切りに、オペラのレパートリーにも手を広げようとしていますから、これからのさらなる躍進には期待しないわけにはいきません。
CDも、日本のEXTONレーベルから多くのアルバムがリリースされていますし、スイス・ロマンド管弦楽団とはオランダのレーベルPENTATONEからこれまで2枚のSACDが出ていました。それぞれに「フランス」、「ドイツ」というキーワードが秘められたダンス音楽が集められていた、かなり凝った選曲のアルバムでしたが、今回はその「ロシア編」となります。
まずは、この華麗にポーズをとるバレリーナをあしらったジャケットに注目です。このレーベルは最近ジャケットのデザインを一新して、さらにクオリティが上がっていますが、これもレタリングと写真との絶妙なコンビネーションにはうならされます。ただ、この写真と、最初を飾るのがチャイコフスキーの「白鳥の湖」(このタイトルを「はくちょうこ」と短縮するのだけはやめましょうね)だということで、アルバム全体のイメージが固まってしまうような気にさせられるのは、もしかしたら山田さんが仕掛けた巧妙な罠だったと気づくには、それほど時間は必要ではありません。
まず、その「白鳥の湖」の、「華麗」さとは全く縁のない武骨な演奏を聴けば、これが単なる「名曲アルバム」を目指したものではないことはすぐに分かります。最初の「情景」のオーボエ・ソロは、なにか喘いでいるような息苦しさを伴っています。「ワルツ」の低音の重っ苦しさは、とてもフランス語圏のオーケストラとは思えません。「白鳥の踊り」のシンコペーションの、なんと野暮ったいるいことでしょう。そして2番目の「情景」でのハープ、ヴァイオリン、チェロのそれぞれのソリストの持って回った歌い口には、ただの「甘さ」ではない何かを感じないわけにはいきません。
続く、グラズノフの2つの「コンサート・ワルツ」も、単に表面的な流麗さをなぞるだけではない、もっと深いものを引き出そうとしている意志を感じてしまいます。結局、それはこの作品の底の浅さを露呈することにしかならないのですが。
そんな、ちょっとした物足りなさを感じつつ、後半のショスタコーヴィチの「黄金時代」と、ストラヴィンスキーの「サーカス・ポルカ」を聴くと、そんなモヤモヤは一掃されてしまいます。この不健全なアイロニーの塊のような2つの作品にこそは、心の底から共鳴できる音楽が満ち溢れていたのです。もしかしたら、単純にこれだけを聴いたのではそれほどの感銘はなかったのかもしれません。その前にあえて「つまらない」ものを持ってきたからこそ味わえるこの充足感、そんな腹黒い魂胆によって、このアルバムはとびきりの価値を持つことになりました。指揮者の勝ちです。

SACD Artwork © Pentatone Music B.V.
[PR]
by jurassic_oyaji | 2016-04-07 23:14 | オーケストラ | Comments(0)