おやぢの部屋2
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WAGNER/Tristan und Isolde

Wolfgang Millgram(Ten)
Hedwig Fassbender(Sop)
Leif Segerstam/
Royal Swedish Opera Male Chorus
Royal Swedish Opera Orchestra
NAXOS/8.660152-54



この「おやぢの部屋2」の最初のアイテムが、レイフ・セーゲルスタムが指揮したスウェーデン王立歌劇場のメンバーによるヴァーグナーのオペラ合唱曲集でした。この、男の風上にも置けないようなファースト・ネームを持つ(それは「レイプ」)フィンランドの指揮者によるヴァーグナー、ちょっと今までにない風通しの良さを感じたので、この「トリスタン」の新録音も聴いてみる気になりました。
最近のオペラCDは、いろいろ複雑な状況の中にあるようです。何よりも、DVDの価格が下がってきたことにより、CDと変わらない、場合によってははるかに安い価格で、音だけではなく、映像も見ることが出来るようになったのは、オペラファンにとってはうれしいことです。正直、小さな文字のリブレットを見ながら(CDサイズになって、オペラの対訳は本当に読みづらくなりました)音だけで話を追うのは、かなり辛いものがあります。それが、音楽とドラマを同時に味わうという、本来オペラを鑑賞する時のあるべき姿が簡単に実現できるようになったのですから、まさにCDの存在価値自体が問われる事態となっているのです。
そうは言っても、全ての演奏に映像が付くわけではないのですから、これからも「音だけ」のオペラが無くなることはありません。要は、DVDなりでその作品の芝居の流れとセリフを頭に入れておきさえすれば、CDを聴いた時にはリブレットに頼らなくても言葉は分かりますし、それこそ、一つの固定された演出ではなく、自分の好きなような画面を想像することだって出来るようになるのですからね。正直、声は素晴らしいのに体格があまりに立派すぎたり、容貌が水準に達していない歌手などは、アップで見たくはありませんし。
そんなわけで、このスウェーデンのオペラハウスのプロダクション、演目は「トリスタン」、内容はすっかり頭に入っているものですから、「音だけ」で楽しむことにしましょう。まず、注目したいのは、第1幕で登場する合唱です。前のアルバムでもここの合唱団のレベルの高さは証明済みですが、ここで聴くことの出来る男声合唱も、とことん存在感のあるものでした。単にきれいにハモるという次元を超越した、その役(この場合は水夫たち)になりきるという、オペラの合唱のまさにあるべき姿です。
ひとつ、この演奏で特徴的なのが、第2幕が非常に短いということです。普通70分以上かかるものが、61分しかありません。これは、流れを最大限に重視するセーゲルスタムの音楽の作り方によるものなのでしょう。事実、前奏曲から続く、狩の角笛を描写した三連符の速いこと。これはまるで、少しでも早く邪魔者には遠くへ行ってもらいたいと願うイゾルデの、はやる気持ちを表しているかのように聞こえます。そして、さんざん待ちこがれたトリスタンが現れてからの段取りの良いこと。まさに、余計な手順は省いて、すぐにでもベッドへ直行したいという、若い恋人たちのノリです。そう、トリスタンのミルグラムこそ、ちょっとくたびれ気味の木偶の坊ですが、イゾルデ役のファスベンダーは、とてもしなやかでキビキビした、若さあふれるソプラノです(音だけだからこそ、そのような印象が際だつのかもしれません)。ですから、彼女が歌う「愛の死」は、重くドロドロしたものが一切感じられない、極めてピュアな輝きをもって迫ってきます。ありがちな年増の「王女」ではない、もっとピチピチしたイゾルデの姿が、そこにはありました。
オーケストラが、特に弦楽器に艶やかさが不足していると感じられたのは、あるいは、意識してアクの強さを押さえようとしたセーゲルスタムの配慮なのかもしれません。
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by jurassic_oyaji | 2005-08-22 19:44 | オペラ | Comments(0)