おやぢの部屋2
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VENEZIANO/La Passione secondo Giovanni
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Raffaele Pe(CT), Luca Cervoni(Ten)
Marco Bussi(Bas)
Antonio Florio/
Ghislieri Choir(by Giulio Prandi)
Cappella Neapolitana
GLOSSA/GCD 922609




ガエタノ・ヴェネツィアーノという17世紀後半に活躍した作曲家は、別にヴェネツィアとは関係なく、ナポリで要職についていた人でした。日本語版のWIKIでも扱われていないほどのマイナーな作曲家ですが、最近になって研究も進み、多くの作品が紹介され始めているようです。
今回は、こちらはナポリに由来するピリオド・アンサンブル、「カペラ・ナポリターナ」の指揮者アントニオ・フローリアがナポリで保存されていたアーカイヴの中から写筆稿を発見して、自ら校訂と再構築を行った楽譜によって演奏された、「ヨハネ受難曲」です。もちろん、これが世界初録音となるのでしょう。イタリアの作曲家ですから、タイトルもイタリア語になっていて、「ヨハネ」は「ジョヴァンニ」と呼ばれています。ただ、テキストはイタリア語ではなく、あくまでカトリックの言葉であるラテン語が使われています。ですから、このタイトルは正式には「Passio Domini nostri Jesu Christi secundum Ioannem」となります。「ヨハネ」は「イオアン」でしょうか。スーパーみたいですね(それは「イオン」)。
新約聖書の4つの福音書をテキストにした「受難曲」としては、バッハの作品が最も有名ですし、その前の時代のシュッツの作品も最近では良く聴くことが出来ます。しかし、これらは同じキリスト教でもプロテスタントの教会のために作られたものですから、テキストはドイツ語に訳したものが使われていますね。おそらく、今のクラシック界では、「受難曲」といえばこのドイツ語版が主流を占めているのではないでしょうか。
そんな中で、ラテン語による「受難曲」は、現在ではほとんど聴くことはできません。いや、作品はたくさん作られてはいたのですが、それらがきちんと楽譜として出版されたり、それを用いて演奏されるという機会がほとんどなかったということなのでしょう。そう遠くない将来にはこのような作品も広く知られるようにはなるのか、あるいは昨今のレコード業界の沈滞ムードのせいで、このようなレアなものの録音を手掛けるところが少なくなって、結局学究的な対象のままで終わってしまい普通のリスナーのところまでは届かない状況に終わってしまうのかは、誰にもわかりません。
このヴェネツィア―ノの作品は1685年に作られたものなのだそうです。先ほどのシュッツの「ヨハネ受難曲」は1666年頃に作られていますから、時代的にはそれほどの隔たりはありません。さらに、基本的に、この2つは福音書のテキストだけを用いて作られた受難曲ですから、バッハの作品のような自由詩によるアリアなどは全く含まれてはいません。しかし、その音楽は全く異なった様相を見せています。
まずは楽器編成、というか、シュッツの場合はそもそも楽器は全く入らないア・カペラで歌われているのですが、ヴェネツィア―ノでは弦楽器の合奏に通奏低音が加わっています。次に、登場人物のパートも違います。シュッツやバッハなどは、エヴァンゲリストはテノール、イエスはバスというのが定番ですが、ここではエヴァンゲリストがカウンターテナーによって歌われています。作られた当時はカストラートだったのでしょうか。さらにイエスのパートはテノールです。これだけで、全体の音色がとても明るいものになっています。
そして、決定的な違いが音楽そのものの明るさ。エヴァンゲリストは、とても雄弁な楽器の伴奏に乗って、まるでオペラのアリアのような装飾的なメリスマを多用して聖書の言葉を歌い上げていきます。民衆の合唱も、ポリフォニックに迫ります。それらはまるでマドリガーレのような軽快さを持っています。「受難曲」がこんなに明るくていいのか、と思えるほどのその陽気な音楽は、やはりくそまじめなドイツ人では決して出すことのできない、イタリア人ならではのキャラクターなのでしょうか。
カウンターテナーのラファエレ・ペが、いい味を出しています。

CD Artwork © Note 1 Music GmbH
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by jurassic_oyaji | 2016-04-16 09:34 | 合唱 | Comments(0)