おやぢの部屋2
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MORAVEC/ Violin Concerto, Shakuhachi Quintet
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Maria Backmann(Vn), James Nyoraku Schlefer(Sh)
Stephen Gosling(Pf), Voxare String Quartet
Rossen Milanov/
Symphony in C
NAXOS/8.559797




1957年にアメリカで生まれた作曲家、ポール・モラヴェックの作品集です。チェコ語だと「モラヴェッツ」になるラストネームでもわかる通り、父親がチェコ系、そして母親がイギリス系という出自なのだそうです。
彼は幼少のころから聖歌隊のトレブル・パ-トを歌うことで、音楽と親しんでいましたが、そのころ衝撃を受けたのがテレビの「エド・サリヴァン・ショー」で見たビートルズだというのが、面白いですね。その後バッハ、ベートーヴェン、ワーグナー、ブラームスといった「普通の」音楽との出会いもあり、ピアノのレッスンを受けるようになって、13歳で作曲を始めます。
現在では、アメリカを代表する作曲家として大活躍、オーケストラ作品や室内楽だけではなく、歌曲やオペラなど、あらゆるジャンルで膨大な作品を産み出しています。最新作はスティーヴン・キングの「シャイニング」を元にしたオペラで、今年の5月7日にミネソタのオペラハウスで初演されます。
今回のアルバムでは、彼の作品の中でも最も完成度の高いものとされている「ヴァイオリン協奏曲」がまず演奏されています。彼の場合、演奏家との出会いによって作品のインスピレーションがわいてくるケースが多いそうですが、この作品も、長年にわたって創造の源となってきたヴァイオリニストのマリア・バックマンのために作られています。黄色くはありません(それは「パックマン」)。もちろん、ここでも彼女がソロを担当しています。彼女の卓越した演奏技巧を前提として作られたこの協奏曲は、確かに高度のテクニックを必要とするものですが、彼女のよどみのないヴァイオリンによってとても魅力的に迫ってきます。モラヴェックの作風は、ごくオーソドックスで分かりやすい和声とメロディが基本、そこにジャズや、ほんの少しの「前衛的」なかけらを加えたような感じではないでしょうか。特にこのヴァイオリン協奏曲では、ブラームスあたりの重厚なテイストもいたるところに見られます。長大なカデンツァを挟んで、圧倒的な盛り上がりを見せるフィナーレは聴きごたえがあります。ここで共演している「Symphony in C」というのは、アメリカに3つしかないという「教育オーケストラ」、ここで学んだ才能が、各地のオーケストラの団員として活躍しています。
もう一人の、彼の作曲の源となった人物が、尺八奏者のジェームズ
如楽(にょらく) シュレファーです。彼はあの横山勝也氏などに師事、日本人以外ではほんの少しの人しか許されていない「大師範」の免状を与えられているのだそうです。また、彼は「虚心庵アーツ」という団体をアメリカに設立して、日本の楽器、ひいては日本の文化を世界中に広める活動を行っています。この「尺八五重奏曲」も、その「虚心庵アーツ」からの委嘱によって作られました。
ここでは、その如楽さんと「ヴォクサー弦楽四重奏団」(と読むのだと思います。少なくとも、このCDの帯やNMLで表記されている「ヴォザール」でないことだけは間違いありません)との共演です。曲の最初ではカルテットだけでいともロマンティックな音楽が演奏されますが、そこに尺八が加わるとガラッと曲想が変わる、というのが、モラヴェックならではのこの楽器との対峙の仕方だったのでしょう。あたかも「共演」していると見せかけて、音楽的には全く異質なものが最後まで互いに譲らない姿勢がありありと見て取れます。結局はやっぱり西洋楽器、あるいは西洋音楽の軍門に尺八は下ってしまう、という、まさに西洋人が見た和楽器という構図がミエミエの作品です。
あと2曲、ヴァイオリンとピアノのための小品が演奏されています。最後の「Everymore」という曲は、バックマンの結婚祝いに作ったものなのだそうです。これは1度聴いたら忘れられないこてこての「ポップ・チューン」、ビートルズがアイドルだった作曲家のルーツを見る思いです。

CD Artwork © Naxos Rights US, Inc.
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by jurassic_oyaji | 2016-04-21 20:18 | 現代音楽 | Comments(0)