おやぢの部屋2
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BACH/Missa BWV232(1733)
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Eugénie Warnier, Anna Reinhold(Sop)
Carlos Mena(CT), Emilliano Gonzalez Toro(Ten)
Konstantin Wolff(Bas)
Raphaël Pichon/
Pygmalion
ALPHA/Alpha 188




以前こちらで聴いたモーツァルトのアリア集の中で、とてもセンスの良いバックを務めていたラファエル・ピション指揮の「ピグマリオン」が、彼らの本来のフィールドでバッハを演奏していたアルバムが目に入ったので、聴いてみました。バッハの「ミサ・ブレヴィスBWV232」です。
カトリックの典礼で用いられる「ミサ」は、本来は「Kyrie」、「Gloria」、「Credo」、「Sanctus」、「Agnus Dei」の5つのパーツから出来ていますが、それの最初の2つだけから成るものは「ミサ・ブレヴィス(小さなミサ)」と呼ばれます。プロテスタントの場合も、ルター派ではこの形でのミサは認められているので「ルター派のミサ」とも呼ばれています。バッハが作ったこの形の作品は、一応4曲(BWV233-236)残されています。
しかしここでは、それらとは別の「BWV232」が演奏されていました。このシュミーダー番号をご覧になれば、有名な「ロ短調ミサ」であるとこはすぐに分かりますが、それは全パーツが揃った「フル・ミサ」ですから、「ミサ・ブレヴィス」ではないのでは、という疑問が浮かんでくるはずです。そのあたりは、この「ロ短調」の成立経緯を考えれば納得です。フル・ミサとして完成されたのは1749年頃ですが、バッハはその時点で以前に作られたものを集め、足らないものは新たに作って「ロ短調ミサ」という大曲に仕上げていたのです。「Kyrie」と「Gloria」がまさにそのような「在庫品」、1733年にドレスデン選帝侯に献呈するために作られていたものだったのです。つまり、ピションたちは1733年にタイムスリップして、その時には「ミサ・ブレヴィス」という形で存在していた作品をここで演奏している、ということになるのですね。
合唱は23人と、程よい人数、オーケストラも弦楽器は4.4.3.2.2という、少し大きめの編成です。ただ、見かけはそういう人数なのですが、ヴィオラ以下のパートにはそれぞれヴィオール系の楽器が1本ずつ含まれています。さらに、通奏低音にもオルガン、チェンバロ、そしてテオルボまでが加わっているというヴァラエティに富んだ編成がとられています。それによって弦楽器全体はとてもソフトな音色を楽しむことが出来ますし、テオルボが大々的にフィーチャーされた「Domine Deus」のデュエットなどでは、それがまるでハープのように聴こえてきて、とても典雅な思いになれます。
合唱もとことんまろやかな歌い方で迫ります。冒頭の「Kyrie」などは、良くある荘厳で重厚なものでは全然なくて、気抜けするほどの爽やかさです。トランペットとティンパニが活躍する場面でも、それはリズムを強調するのではなく、華やかな音色を加えるという方向に作用しているようです。
ご存知のように、献呈の際にバッハはスコアではなく、自ら写筆したパート譜を作って、それをドレスデンに送っています。その時にいくつかの部分で改訂を行っています。それはスコアには反映されていませんし、さらにスコア自体も後にパート譜で改訂した箇所とは別のところを書き換えたりしているので、この「ミサ・ブレヴィス」は厳密にいえば「ロ短調ミサ」の中の最初の2曲とは異なっているところがあります。その具体的な相違点は、こちらのCDに付いてきたパート譜のファクシミリや、こちらの、2014年に出版されたCARUSのスコアを見れば分かります。
しかし、その楽譜などと照らし合わせてみると、この演奏は1733に作られた「ミサ・ブレヴィス」とは別物であることに気づきます。特に「Et in terra pax」のフーガの歌い出しの「hominibus」のリズムは、全て付点音符になっているのはちょっと問題。これは、「ミサ・ブレヴィス」の時点では「♪+♪」の平たいリズムだったものが、「ロ短調ミサ」になった時に(おそらく)改訂された部分なのですからね。さらに、パート譜を作った時に改訂されたバスのアリア「Quoniam tu solus sanctus」では、両方のバージョンが混在してますし。こういういい加減なことは、金輪際やめてもらいたいものです。

CD Artwork © Alpha Productions
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by jurassic_oyaji | 2016-04-23 22:57 | 合唱 | Comments(0)