おやぢの部屋2
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BERLIOZ/Symphonie fantastique, Lério
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Gilles Ragon(Ten), 宮本益光(Bar)
渡部ギュウ(Narr)
Pascal Verro/
仙台フィル第300回定期記念合唱団(by佐藤淳一)
仙台フィルハーモニー管弦楽団
Onebitious Records/OBXX00009B00Z(2.8MHz DSD)




仙台フィルのライブ音源によるハイレゾ配信を聴くのは、こちらの「第9」に次いで2回目、今回は収録されたホールも違いますし、おそらく何度も経験してそれなりのノウハウも蓄積されてきたのでしょう、見違えるように素晴らしい音で録音されていました。FLACとDSF(DSD)の両方がリリースされていますが、一応オリジナルということでDSDを購入です。
これは、4月15日と16日に行われた第300回という記念すべき定期演奏会の録音です。常任指揮者のパスカル・ヴェロの指揮で、ベロリオーズ、いや、ベルリオーズの「幻想交響曲」と、本来はそれとセットで演奏されるために構想された「レリオ、または『生への回帰』」というオラトリオが演奏されていました。「レリオ」の方はほとんど忘れ去られた存在になっていて、何種類かの録音は存在しますが実際にコンサートで演奏される機会は非常に稀です。
まずは、最初に演奏された「幻想」を聴いてみます。マイクはステージ上方に吊った2本だけですが、特に管楽器の粒立ちがくっきりと聴こえてきます。ホルンなどは、普通はほとんど聴こえてこないようなフレーズがはっきり聴こえます。こうなると、ソロのほんの少しのミスもしっかりわかってしまいますから、怖いですね。ホルンなどは、最後までちょっとピッチが不安定なのもとても気になってしまいます。
しかし、曲の運びはとてもきびきびしていて、メリハリのはっきりした音楽が伝わってきます。かと思うと、第2楽章の最後での突然のアッチェレランドのような、意表を突く表現が見られることもありました。3楽章はまさに絶品でしたね。とても深みのある響きに包まれて、ゾクゾクするほどの寂莫感が迫ってきます。特に、クラリネット・ソロのピアニシモは、心を奪われます。それに対して、第4楽章のなんと華麗なこと。ここでは金管楽器が、とことんゴージャスな音楽を仕掛けてきます。これは、普通とはかなり違うアプローチ。ところが、最後の、やはりクラリネット・ソロのひと吹きで、それが狂気に変わります。これは見事、これをきっかけに曲の目指すものがガラリと変わってしまうんですからね。
それを受けた終楽章も、Esクラリネットが出てくるあたりでギアがさらに狂気にシフトします。ここで、一瞬ファゴットが乗り遅れるというスリリングな場面も、いやあ、これは生で聴いてみたかったですね。
「レリオ」は、長いナレーションの間に音楽が挟まるという、ちょっと珍しい作り方、というか、そのために音楽としての価値がほとんど認められてはいないという不幸な目に遭っている作品なのでしょう。しかし、ここではそのナレーションを日本語に直してとても上手な役者さんが演技を交えながらほとんどお芝居のノリで語っていますから、それだけでまず引き込まれ、そこでの音楽の役割もとてもよく理解できるようになっています。一見すると脈絡のない小品の羅列のようでもありますが、それらはしっかり有機的に関係づけられているのですね。
それは、合唱が最初に出てくる「亡霊の合唱」で、しっかり印象付けられます。この演奏では合唱は客席の中で歌っていたはずですが、その2オクターブに渡る平行ユニゾンによる不気味な歌は、マイクから少しオフになっている部分も含めた広がりとなって圧倒的な力で伝わってきます。
男声合唱の「山賊の歌」の無駄な明るさも、前後の語りからその意味がはっきり分かりますし、最後の長大な「『テンペスト』による幻想曲」でも、ベースを欠いた軽やかな混声合唱のサウンドは、ベルリオーズのオーケストレーションの一部として異彩を放っています。
その前の「エオリアン・ハープの思い出」でのクラリネット・ソロの素晴らしいこと、仙台フィルって、いつの間にこんなすごいオーケストラになっていたのでしょう。

File Artwork © Label Gate Co.,Ltd
by jurassic_oyaji | 2016-05-17 23:46 | オーケストラ | Comments(0)