おやぢの部屋2
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Emigrantes/Flute Music from Argentina
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Elena Yarritu, Paulina Fain(Fl)
Exequiel Mantega(Pf)
MSR/MS 1591




アメリカの西海岸を拠点にして、ソロやアンサンブル奏者、あるいは教師として活躍しているフルーティスト、エレナ・ヤリトゥが、アルゼンチンの作曲家の作品を演奏しているアルバムです。彼女は、日本人を母親、スペイン/バスク系アメリカ人を父親として日本に生まれ、その後アメリカで育ちます。
彼女は、アルゼンチンの作曲家でアメリカにも活動拠点を持っているピアニストのエゼキエル・マンテガと親交があって、彼の才能を高く評価しているのだそうです。全てが世界初録音となるこのアルバム、その前半では彼の作品が演奏されています。
最初が、アルバムタイトルとなっている「移民」という、ピアノとフルートのための、3つの部分から成る作品です。これは、イスラエル人のヤリトゥの夫の実家に行った時の彼女自身の体験が元になっています。1925年に撮影されたという古い家族の写真を見て、そこに写っている人たちがその後の第二次世界大戦中にたどる運命に思いを馳せたことが、彼女に新しい作品を作らせる動機となりました。2013年に彼女がマンテガの元を訪ねて新しいフルート曲を作ってほしいと頼んだ時にこの話をすると、作曲家はたちどころにその最初の部分のテーマを作ってしまったのだそうです。それは、短調で作られた物悲しいメロディ、その「移民」たちの深刻な運命を物語るようなものでした。次の部分になると、曲調はガラリと変わり、アルゼンチンの民謡を引用した子守唄のようなものになります。そして、最後はとても明るいイケイケの音楽で、全体が閉じられます。
次に演奏されているのは、アルト・フルートとピアノのための「ラクダ」という作品です。ここでは、ちょっと鄙びた、まるで尺八のような音色のアルト・フルートによって、ラクダの行き交う広々とした草原の情景が描かれています。
マンテガの最後の作品は、フルート四重奏曲「松明」です。これは、C菅のフルート2本とアルト・フルート、バス・フルートのために作られたものですが、それを多重録音によって彼女ともう一人、作曲者のパートナーであるタンゴ・フルートの第一人者、パウリナ・ファインとの二人で演奏しています。タンゴのイディオムをふんだんに盛り込んだ、とても楽しい曲ですが、かなり難易度は高そう、しかし、この二人はやすやすとそれぞれ2人分のパートを見事に吹ききっています。
後半は、アルゼンチンを代表する作曲家、アストル・ピアソラの曲です。ただし、それはオリジナルではなく、マンテガによって編曲されたバージョンです。まずは、フルーティストにとっては「タンゴの歴史」とともに必須アイテムとなっている「タンゴ・エチュード」。もちろん、これは練習曲なので一人で吹くために作られたものなのですが、マンテガはそこにもう一つの声部を書き足しているのです。オリジナルは1987年にHENRY LEMOINEから出版されています(2006年にはピアノ伴奏が付けられました)が、こちらのバージョンも同じ出版社から2014年にリリースされました。
これも、先ほどのファインとのデュエットです。オリジナルのパートはそれぞれ1番フルートと2番フルートに振り分けられていますから、それぞれのプレーヤーは主旋律と対旋律とを両方吹くことになります。ですから、そこでそれぞれのキャラクターがはっきりしてくるはずなのに、この二人は恐ろしいほど音色や奏法を揃えてきているので、いったいどちらがどのパートなのかは全くわかりません。右チャンネルの人の方が少し旋律を崩して歌っていたりしますから、こちらがファインなのでは、と思うのですが。
最後は、やはりピアソラの有名な、タンゴ・バンドのための「Concierto para Quinteto」を、マンテガがフルートとピアノに編曲したものが演奏されています。
聴き終わってみると、二人のフルーティストの荒っぽい迫力に、ぐったりしてしまいました。お上品な人にはタンゴは吹けませんね。

CD Artwork © Elena Yarritu
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by jurassic_oyaji | 2016-05-28 20:20 | フルート | Comments(0)