おやぢの部屋2
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SCHOENBERG/Choral Works


Laurence Equilbey/
Choeur de Chambre Accentus
Jonathan Nott/
Ensemble Intercontemporain
NAÏVE/V 5008



以前も「トランスクリプションズ」という、意欲的な企画のアルバムを出したアクサントゥス、そのテンションが編曲や演奏に反映されていなかったのが惜しいところですが、今回は全編シェーンベルクという、やはり濃いところを衝いたものを出してくれました。しかも、共演がリゲティなどの演奏でお馴染みのジョナサン・ノットですから、これは聞き逃せません。しかし、シェーンベルクって、アルバム1枚が出来るほどたくさんの合唱曲を書いていましたっけ?サントラはあるでしょうが(それは「シェルブール」)。私自身は、「地には平和を」という、かなりロマンティックな曲しか、聞いたことはありませんから、この、正直私には取っつきにくい作曲家を、合唱作品から攻めてみる、という格好の機会を与えられたことになるのではないでしょうか。
しかし、実際にアルバムを手にして分かったのは、これは合唱曲だけのものではないということでした。全体の三分の一を占めるのは、「室内交響曲」というインスト曲、これは別に無くても構わないものでした。ノットも、ここで指揮をしているだけ、彼は合唱には全くタッチしていなかった、というのも、やはり買ってみなければ分からなかったことです。
その代わり、と言ってはなんですが、ここでは、有名な「地には平和を」のオリジナル・ア・カペラ・バージョンと、オーケストラによる伴奏の付いたバージョンを並べて聴くことが出来ます。そのオケ伴、「コラ・パルテ」ですから合唱パートと同じことを楽器でやって重ねているだけなのですが、まるで全く新しい声部が加わったようなスリリングな体験が味わえます。埋もれて聞こえにくいパートが、オーケストラを重ねることによってはっきり前面に出てきて、その結果、全てのパートが明瞭に聞こえるようになったということなのでしょう。さらにもう一つ、「色彩」という、「5つの管弦楽曲op.16」の第3曲目(もちろん、オーケストラのための曲)を合唱のために編曲したものが入っているのですが、こちらもそれに輪をかけてスリリング。フランク・クラフチクという、「トランスクリプションズ」でも作品を寄せていた人が2002年に行った編曲、これは、ある意味原曲を超えているかもしれないほどのインパクトを与えられるものでした。ヴォカリーズで歌われる絶妙なハーモニーの流れの中に配された、まるで喘いでいるかような悩ましいため息は、原曲では確か木管やハープやチェレスタの一撃だったはず。このような型破りな「置き換え」を施されたことにより、この曲は本来の「後期ロマン派」のカテゴリーには収まりきれない、まさに「21世紀」の響きを獲得することが出来ました。そして、このアルバムのなによりも素晴らしいところは、最後に、シェーンベルク自身の最晩年の作品「深き淵より」(1950)を配置したことです。この中で聴ける無調っぽいたたずまいや、当時としては最先端の表現ツールであった「シュプレッヒ・ゲザンク」が、このクラフチクの編曲のあとで聴かれると何と間の抜けた陳腐なものに感じられてしまうことでしょう。彼が創設し、「最先端」と信じて疑わなかった技法が馬脚を現すには、半世紀という時間で充分だったということが、この2曲を同じアルバムに収録することによって、見事に明らかになっているのです。
前作と同じく、得難い体験を味わえたこの企画、これで合唱団の女声がもっと余裕のある声を聞かせてくれ、男声が自信たっぷりの音程で歌ってくれていれば、何も言うことはないのですが。
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by jurassic_oyaji | 2005-08-24 20:44 | 合唱 | Comments(0)