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REICH/Sextet, Clapping Music
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LSO Percussion Ensemble
LSO LIVE/LSO5073(hybrid SACD)




このLSO LIVEというレーベルは、かなり初期の段階からハイレゾPCMやDSDで録音を行っていました。もちろん、その頃はSACDと同じフォーマットのDSD、つまり「DSD64」を採用していました。
今回の、2015年10月に録音された新しいアルバムでは、入手したものでは初めて、その録音フォーマットが「DSD128」と明記されていました。同じ年の1月に録音されたものではまだ「DSD」という表記しかありませんでしたから、その頃はまだ「DSD64」だったのでしょうね。いよいよこのレーベルもSACDを超える「ハイ・サンプリング・レート」を採用するようになったのでしょう。
そうなると、ハイレゾ音源の配信サイトでは、そのDSD128の音源が入手できるのではないか、という期待が高まるのですが、DSDを専門に扱っているサイトでも、DSD64しか扱っていませんでした。残念(もちろん、日本のサイトではDSDそのものがリリースされていません)。
スティーヴ・ライヒの初期の作品がLSO LIVEのようなレーベルから出るなんてちょっと意外な気がしますが、このオーケストラではマイケル・ティルソン・トーマスが首席指揮者だった時代(1990年代)から、ライヒの作品は良く演奏していたのだそうです。という情報は、このライナーノーツに掲載されている、首席打楽器奏者のニール・パーシーからのもの、その中で彼は、この、彼が中心になって打楽器パートだけで録音されたこのアルバムは、ライヒの80歳の誕生日のためのオマージュだと述べています。紅白ですね(それは「おまんじゅう」)。
そうですか、もう80歳になるのですか。ということは、この前のペンデレツキとは3つしか違わないということになるんですね。とてもそんな風には見えません。しかし、それぞれにジャンルの異なるアーティストからのリスペクトを受けている、という共通点はあります。ただ、ペンデレツキに関しては、それはかつての「前衛音楽」時代の作品のみに対するものなのですが、ライヒの方はすべての時代のもの、さらに、もしかしたらクラシックの人よりはロック、さらにはヒップ・ホップ系の人の方がよりシンパシーを持っているのではないか、というほど、境界を超えたところでの人気を誇っているような気がします。というより、彼の作品ははたして「クラシック」なのか、というもっと掘り下げたところでの問いかけも必要なのでしょう。
そう、ライヒの場合は、「クラシック」とか「現代音楽」といった枠にはめて議論されること自体が、あまりふさわしくはないのですよ。そこにとどまっているうちは、たとえばこちらのような見当違いの評価にさらされてしまうことは避けられません。
このアルバムで演奏されているのは、まずは有名な「Clapping Music」です。ライヒの出発点は最初期の「「ピアノ・フェイズ」に見られるような、2人の演奏家が全く同じ繰り返しの音型を同時に始めて、それを片方がほんの少しテンポを速めるために生じるズレを体験するという「フェイズ・シフト」の技法だったわけですが、この頃になると、その「ズレ」を生じさせる遷移的で不確定な部分がなくなって、いきなり音符一つ分シフトする、というやり方に変わっています。おそらく、この時点でライヒは「現代音楽作曲家」から「ジャンルを超えた作曲家」に変わったのではないでしょうか。
そんな、リズム感さえ良ければ、面倒くさいクラシックの音楽教育(「教育とは偏見を植え付けること」と高橋悠治が言ってました)を受けなくても演奏できる作品のあとに、もう少し複雑になった「Music
for Pieces of Wood」を経て、「Sextet」を聴きはじめる頃には、ライヒがこの1985年あたりにたどり着いた豊かなハーモニーを持つ一つの確かな成果を味わうことが出来ることでしょう。
期待していた録音は、ライブということでマイクのセットに問題があったのでしょう、「Music for Pieces of Wood」あたりでは変な干渉が起こっていてちょっとノイズっぽい音になってしまっています。これだったら、別にDSD128で聴く必要はありません。

SACD Artwork © London Symphony Orchestra
by jurassic_oyaji | 2016-07-16 21:11 | 現代音楽 | Comments(0)