おやぢの部屋2
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WAGNER/Die Walküre Act 1
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Kirsten Flagstad(Sieglinde)
Set Svanholm(Siegmund)
Hans Knappertsbusch/
Wiener Philharmoniker
DG/UCGD-9047(single layer SACD)




昔、この「ハンス・クナッパーツブッシュ」という指揮者の名前を文字で目にしたときには、一体なんと発音するのだろうと悩んでしまったものです。最大のネックは3つある「ツ」の扱い、大文字なんだか小文字なんだか分かりません。現に、「クナッパーッブッシュ」と、全部小文字にして苦労している友人が身近にいましたからね。多くの人が、そんな面倒なことは考えずに単に「クナ」と言っているのだと知ったのは、だいぶ後のことでした。
第二次世界大戦後に再開されたバイロイト音楽祭を支えた指揮者として非常に有名な方で、そのバイロイトのライブ録音は数多くリリースされています。1962年にPHILIPSのスタッフによって録音された「パルジファル」は、演奏、録音ともに最高のものとの評価がなされている名盤です。
しかし、そのような劇場における実際の上演のライブ録音ではなく、スタジオでのセッション録音になると、彼に対する評価は著しく低下します。なんせ、実際にそんなセッション録音を仕切ったプロデューサー自身が公にこのようなことを書いているのですから。
In the theatre I believe that he was a Wagner conductor of supreme ability. But on records he was a total failure. [...] He was a nineteenth-century professional, and to the end of his life the gramophone was a newfangled toy. We could not do him justice.

これが2007年にはこんな風に訳されています。
「劇場の中では無上の能力をそなえたワーグナー指揮者だったと確信している。しかし、レコード上での彼はまるで落第だった。・・・彼は19世紀的なプロフェッショナルであり、死ぬまでレコードは新奇な玩具だった。私たちには、彼を正当に扱うことができなかった。」

お判りでしょうが、これは英DECCAのレコーディング・プロデューサーだったジョン・カルショーの「Ring Resounding」という著作の中の一節です。彼がショルティとウィーン・フィルを使って、ワーグナーの「指環」の、完成した時には世界で最初のスタジオ録音による全曲盤となるレコードを作りはじめる丸1年前に、同じ会場で同じレコーディング・エンジニアの元に、同じオーケストラ(と、同じ歌手)を使って録音されたものが、この「ワルキューレ」の第1幕なのです。
ただ、なぜかこのSACDでのクレジットは、こうなっています。しっかりしてくれじっと

ここで述べられているように、クナッパーツブッシュと仕事をしてつくづくこの指揮者がスタジオ録音にはなじまないと痛感したカルショーですから、当然このアルバムも「失敗作」だと思っていたのでしょうね。そして、これはもう「なかったこと」にして、この後、彼はここでジークリンデを歌っていた稀代のブリュンヒルデ、キルステン・フラグスタートをフリッカ役に立てて、「ラインの黄金」の録音に邁進することになるのです。
しかし、そんな製作者の思いとはうらはらに、いまではこんなシングル・レイヤーSACDにもなりうるような、高いクオリティのレコードが出来ていたのでした。何よりも、ゴードン・パリーの録音には圧倒されます。ここでの低音の充実ぶりは、後の「指環」にそのまま受け継がれているのでしょう。そして、クナッパーツブッシュの演奏も、当時カルショーが考えていた規格には当てはまらなかった分、生身の鋭い音楽がそのまま伝わってくるような気がします。前奏曲でのアッチェレランドには驚きましたね。
カルショーが「20世紀には対応できない」と言い切ったクナッパーツブッシュの「レコード」は、21世紀になってやっと正当に評価されるようになったのかもしれません。
LPでリリースされた時には、2枚組の余白に、その前年にやはりウィーン・フィルと録音された、「神々の黄昏」の序幕と第1幕の間の間奏曲と、第3幕の「葬送行進曲」の2曲が入っていました。その後、CD化された時には、このカップリングは外されて1枚になっていましたが、今回はシングル・レイヤーSACDでの長時間収録で、このかつての「おまけ」が復活しています。こちらもゴードン・パリーの録音が存分に楽しめます。

SACD Artwork © Decca Music Group Limited
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by jurassic_oyaji | 2016-07-24 20:22 | Comments(0)