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HASSE/Requiem



Hans-Christoph Rademann/
Dresdner Kammerchor
Dresdner Barockorchester
CARUS/83.175



石井宏さんの快著「反音楽史」によれば、ヨハン・アドルフ・ハッセは「ドイツ人によって音楽史から抹殺されてしまった作曲家」の代表ということになります。ドイツ人による「偏った」音楽史では、生涯に74曲ものイタリア・オペラを作った作曲家は、ドイツ人であっても正当に評価されることはない、というのが、石井さんの見解なのでしょう。そりゃあ、半纏みたいなものを着てれば、そうも思いたくなるでしょう(それは「ハッピ」)。そのハッセが作った「レクイエム変ホ長調」の世界初録音盤です。
1699年、北ドイツ、ハンブルク近郊のベルゲドルフという町に生まれたハッセは、もともとはテノール歌手としてハンブルクの歌劇場で活躍していたのですが、次第に作曲にも手を染めるようになり、本格的にイタリア・オペラを学ぶために、1723年にイタリアへ留学します。1724年にナポリでアレッサンドロ・スカルラッティに師事しますが、そこでたちまち頭角を現し、師匠をもしのぐ超人気オペラ作曲家として大成功をおさめるのです。1730年にはヴェネツィアへ移り、ファウスティーナ・ボルドーニというイタリア人のプリマ・ドンナと結婚し、文字通り「イタリアの血」を獲得します。
1733年にハッセは故郷のドイツへ戻り、ドレスデンの宮廷楽長に就任します(ここは、現在のドレスデン・シュターツカペレ。実は彼が就任する200年近く前から存在していた「楽団」なのですから、その歴史はすごいものがあります)。ハッセはここで、1763年に庇護者であったザクセン選帝侯フリードリッヒ・アウグスト二世が亡くなるまで、宮廷楽長を務めました。そのアウグスト二世の葬儀のために作られたのが「レクイエムハ長調」、こちらはすでにいくつかの録音が出ています。今回の「変ホ長調」は、アウグスト二世の後を継いだフリードリッヒ・クリスティアンが突然亡くなってしまったために、1764年に作られたものです。ただ、「Sanctus」と「Agnus Dei」は、以前に作られていた「変ロ長調」のレクイエムのものが使われています。そちらも聴いてみたいものです(オペラ同様、ハッセは宗教曲もたくさん作っていて、ミサとレクイエムを合わせると、全部で25曲もあるそうです)。
曲は40分程度の長さを持ち、合唱とソロ、あるいはアンサンブルが交替して現れるというものです。「Requiem」の中間部「Te decet hymnus」と、「Agnus Dei」の後半「Lux aeterna」で、男声だけでグレゴリア聖歌を歌っているというのが、ちょっと珍しいところでしょうか。「Dies irae」以外の合唱はあまり印象に残らない軽い作風、その分、ソロには力が入っていて、長年オペラで培われたリリシズムが、非常に魅力的です。中でも、アルトソロ(本来はカストラート)によって歌われる「Lacrimosa」は、深い叙情をたたえた名曲です。先日のミヒャエル・ハイドンの「ガセビア」ではありませんが、これはあのモーツァルトも聴いていた可能性はあり、彼の作品に影響を与えたかもしれないと思えるほどの類似性が認められますよ(そう思うのは私だけかもしれませんが)。
このレーベルの常連ラーデマンが、20年前、まだ学生の頃作ったというドレスデン室内合唱団は、特に男声を中心にまとまりのある柔らかい響きを聴かせてくれています。曲の性格によるものかもしれませんが、表現を強く前に出すというよりは、響きの美しさを重視しているような爽やかな印象を与えてくれています。ただ、肝心のソリストたちは今一歩。中でもアルトはもう少しランクの高い人に歌って欲しかった、という思いは残ります。
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by jurassic_oyaji | 2005-08-28 19:41 | 合唱 | Comments(0)