おやぢの部屋2
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MENDELSSOHN/Symphonien 1 & 4 WIDMANN/Ad absurdum
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Sergei Nakariakov(Tr)
Jörg Widmann/
Irish Chamber Orchestra
ORFEO/C 914 161 A




昔からなじみ深いレーベルの一つ、ORFEOですが、久しぶりに手にしてみたら、レーベルが間違っているのではないかと思ってしまうほど、ジャケットのデザインが変わっていました。かつて、アール・デコ風に統一されていた装飾が、いつの間にかなくなっていたのですね。
演奏している人たちも、トランペットのナカリャコフ以外は全く知らない名前でした。オーケストラの名前を見て、最初はイランのオーケストラだと思ってしまったぐらいですから。もちろん、これは「アイルランド」の室内オーケストラです。ただ、同じアイルランドの団体で、これによく似た「New Irish Chamber Orchestra」という名前は聞いたことがあります。ゴールウェイがベルリン・フィルを辞めてソリストになっても、まだRCAとのアーティスト契約が結ばれていなかった1974年に、一緒にモーツァルトのフルート協奏曲を録音した団体です。
しかし、実はこれは今回の「Irish Chamber Orchestra」とは全く同じオーケストラでした。1963年に創設されたこのオーケストラは、1970年から1995年までは、さっきの「New」が頭についた名前だったのだそうです。現在では正団員を22人、常トラを16人抱える編成で、コンサートマスターが指揮を行ったり、さらに2人の指揮者が「パートナー」となって演奏会や録音を行っています。ここで指揮をしている「Principal Guest Conductor / Artistic Partner」という肩書を持つイェルク・ヴィドマンはクラリネット奏者、さらには作曲家としても活躍している方です。
このCDは、ヴィドマンとこのオーケストラによるメンデルスゾーンの交響曲全集として計画されている3枚のうちの1枚目ですが、そのどれにもヴィドマンの自作がカップリングされている、というのが、ユニークなところです。ここでは、ナカリャコフをソリストに迎えて、2002年に彼のために作られた「Ad absurdum(耳障りなように)」というタイトルの小協奏曲が演奏されています。
メンデルスゾーンのふたつの交響曲に挟まれるような形でマスタリングされている(録音時期は全部の曲が違っています)この作品は、まさにナカリャコフの超絶技巧を誇示するために作られたようなものでした。ヴィドマンの作曲の師はヘンツェやリームだということで、どんだけ退屈な音楽なのかと覚悟して聴き始めたのですが、そんな先入観は完全に覆される、最後までとても緊張して聴いていられる刺激的な作品でした。
最初にいきなり出てくるのが、まるでかつてのペンデレツキかと思われるような弦楽器の軋み、それに乗って、ナカリャコフの無窮動が始まります。それは彼の得意技の「循環呼吸」によって、1分45秒も全くノンブレスで演奏されていたのです。まさに無休動。そのバックでオーケストラはとても難しいシンコペーションを打ち込んでいますし、フルートに至ってはそのナカリャコフ並みの早いパッセージを弾かされるのですから、大変です。このあたりは、まるでジャズ・バンドでプレーヤーがアド・リブのソロを取っているような感じ、ティンパニの壮大なソロなどは、まさにドラム・ソロに匹敵するものです。
終わり近くになって、さらなるサプライズが待っていました。なんだか、デジタル・キーボードのような音が、それまでのテンポをさらに上回る「速弾き」を始めたのです。それはとてつもないスピード、まるでナカリャコフのソロさえもあざ笑うように鮮やかなフレーズを正確に演奏しています。ライナーを読んでみたら、それは「バレル・オルガン」であることが分かりました。穴の開いた紙をハンドルで動かして音を出す、いわゆる「ストリート・オルガン」ですね。これだったら、いくらでも早く弾けます。

メインのメンデルスゾーンも、なかなか意表をつく表現があちこちに出没していて、楽しめました。ただ、特に「1番」で弦楽器の音がとても曇った精彩のない響きなのは、エンジニアがサイモン・イードンなので期待したのに、完全に裏切られてしまいました。

CD Artwork © ORFEO International Music GmbH
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by jurassic_oyaji | 2016-08-18 23:00 | Comments(0)