おやぢの部屋2
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GRIGORJEVA/Nature Morte
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Conrad Steinmann(Rec)
YXUS Quartet
Paul Hillier/
Estonian Philharmonic Chamber Choir
Theatre of Voices
ONDINE/ODE 1245-2




エストニア・フィルハーモニック室内合唱団の新しいアルバムが出ました。指揮をしているのが、かつての首席指揮者のポール・ヒリアーです。彼がそのポストにあったのは前任者のカリユステから引き継いだ2001年から2007年まで、意外と短かったのですね。2008年からはダニエル・ロイスが後継者になったというところまでは知っていましたが、2014年からはラトヴィア人のカスパルス・プトニンシュという人に替わっているのだそうです。
今回のアルバムは、エストニアの作曲家ガリーナ・グリゴリエヴァという、初めて名前を聞く人の作品集です。6曲収録されているうちの5曲までが合唱曲、あとの1曲はリコーダーのソロのための作品です。1962年にウクライナに生まれ、1992年からエストニアに住んでいるというグリゴリエヴァは、写真で見ると名前に似ず(ガリグリゴリ)とてもソフトな感じの女性です。
それを聴く前に、このCDにはエンジニアとしてプレベン・イワンの名前がクレジットされていたのには驚いてしまいました。まさか、このレーベルで彼の名前にお目にかかれるとは。デンマークのDACAPOレーベルでの数々の名録音ですっかりファンになってしまったこのエンジニア、特に合唱にかけては裏切られたことはありませんから、とても楽しみです。そこで、まずCDで最初の曲を聴き始めたのですが、録音会場が教会だったために、ものすごい残響を伴った音でした。もちろん、それはイワンの狙ったことなのでしょうが、そんな残響の中でもくっきりと浮かび上がってくる合唱はとても魅力的でした。ただ、やはりCDの限界も見えてしまいます。なぜSACDにしなかったのでしょう。確かに、このレーベルでは最近のリリースを見ると以前SACDで出していたアーティストでもCDになっていたりしますから、もうSACDには見切りをつけたのかもしれませんね。なんともったいない、と思ってさるハイレゾ配信サイトを見てみたら、ちゃんと24/96のハイレゾ音源がリリースされているではありませんか。せっかくの録音なのですから、CDで聴くのは時間の無駄、即刻ハイレゾをダウンロードしてしまいました。ハイレゾ音源は、もちろんCDとは比べ物にならない、素晴らしいものでした。合唱の声の瑞々しいこと、残念ながら、これだけはCDで味わうことはまずできません。HARMONIA MUNDIのように、CDでリリースしたものでも、自社のサイトでハイレゾ音源を無料でダウンロードできるようなところもあるのですから、他のレーベルもそれを見習ってほしいものです。
そんな、最高のコンディションで聴くことが出来たグリゴリエヴァの作品には、写真で見る外観からは想像できないようなエネルギッシュな音楽が詰まっていました。最初の「Svjatki」という、ロシアの暦でクリスマスの時期を表わす言葉をタイトルにした6曲から成る曲集は、彼女の学生時代から追及していたテーマ、民族的な素材を、そのまま使うのではなく彼女の語法で再現するという手法が結実したものです。そこからは、大地に根付いた叫びと同時に、懐かしさのようなものがじわじわと感じられてきます。女声合唱だけで歌われる曲でも、とても暖かい情感が聴かれます。
次の「Salva Regina」という、弦楽四重奏と4人の重唱による作品は、うって変わってペルト風の作風が前面に押し出されたものです。最近の曲では、この路線が貫かれているようで、最後に収録された2012年の作品「In paradisum」などは、まるでバーバーの「Agnus Dei」(つまり、弦楽のためのアダージョ)のようなテイストです。男声だけによる2011年の「2部作」なども、静謐の極致。地を這うようなベースの凄いこと。しかし、2008年に作られた3曲から成る「Nature Morte」の1曲目では、まさに「現代音楽」という尖がった手法が見られるのが、興味深いところです。
さらに、ルネッサンス・リコーダーによる「Lament」では、信じられないような超絶技巧が満載、エンターテインメントとしての味さえ感じられます。

CD Artwork © Ondyne Oy
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by jurassic_oyaji | 2016-08-20 20:36 | 合唱 | Comments(0)