おやぢの部屋2
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MOZART/Die Entführung aus dem Serail
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Sally Matthews(Konstanze), Edgaras Montvidas(Belmonte)
Tobias Kehrer(Osmin), Brenden Gunnell(Pedrillo)
Mari Eriksmoen(Blonde), Franck Saurel(Selim)
David McVicar(Dir)
Robin Ticciati/
The Glyndebourne Chorus(by Jeremy Bines)
Orchestra of the Age of Enleightenment
OPUS ARTE/OA BD7204 D(BD)




2014年からユロフスキの後任としてグラインドボーン音楽祭の音楽監督を務めているティチアーティが、2015年7月19日に上演された「後宮」の指揮をした映像です。このカンパニーではモダン・オーケストラのロンドン・フィルと、ピリオド・オーケストラのエイジ・オブ・エンライトゥンメント管弦楽団の2団体がピットに入っていますが、バロック・オペラだけではなくこの音楽祭の看板であるモーツァルトのオペラも最近ではこのピリオド・オーケストラによって演奏されるようになっています。
映像の始まりは、開演前の客席、ドレスコードにはうるさいこの音楽祭ですから、タキシードやイブニング・ドレスに身を飾った紳士淑女がホール内をうずめています。初夏に行われた公演ですから、白いタキシードも目立ちますね。そこに、久しぶりに見る「動く」ティツアーティの登場です。なんだか恥ずかしそうにピットの隅から現れた指揮者は、とても物腰の柔らかい印象を与えてくれました。往年のマエストロのような威圧的にオーケストラと、そして音楽を支配しようとする姿は、ここからは全く見ることはできません。前に見た2006年のザルツブルク音楽祭の時にはちょっと緊張気味、その時は指揮棒をもっていましたが、今回は指揮棒はなし、とてもリラックスして軽やかな動きでした。
彼の作り出す音楽は、透明感があふれ、オーケストラの各パートの「歌」がまさに透けて見えるような心地よいものです。演出の方では「トルコ」という場所を強調していたようですが、音楽ではよくあるような「異国趣味」を変に強調するような見え透いたことはせずに、あくまでモーツァルトを前面に出し、その中にほんの少し「異国のテイスト」を持ち込むというクレバーなスタンスを取っていたのではないでしょうか。打楽器群がアホみたいに騒ぎ立てるようなことはしないで、ピッコロあたりのほんのちょっとしたトリルだけでシーンを飾るというようなスマートさですね。
デイヴィッド・マクヴィガーの演出は、デザイナーのヴィッキー・モーティマーとともにとてもリアリティにあふれたステージを作り上げていました。最近の「読み替え」の演出に慣れた目には、この、とことんトルコの後宮の現物に迫ろうというマニアックなほどにリアルで高級感あふれるセットには驚かされます。
そこでは、普段はカットされたり改変されたりしているセリフを、かなりオリジナル通りに使っているのだそうです。ですから、この前のCDでちょっとご紹介した、第3幕の最初だけに登場する「クラース」という人の姿をここでは実際に見ることができるようになっています。楽譜には一応「船乗り」という肩書でセリフ役としてこの名前があるのですが、彼が出てくるのは第3幕の第1場だけ、それも、いったいどこから現れたのか、という正体不明の人物なので、たいていの上演ではこの部分がカットされてしまうという情けないロールです。演出家のマクヴィガーは、きちんとその人を紹介するために、オープニングから登場させています。普通はベルモンテだけが登場するこのシーンに彼もいて、ベルモンテの世話を焼いているのですね。おそらくここまで彼を運んできた船の関係者なのでしょう。
もう一人、これは楽譜にもなく、もちろんセリフも全くないのですが、常にどこかに登場していて、それをカメラがとても意味ありげにアップで撮っている人がいるのですよ。セリムの側近という感じの女性でしょうか。これも、おそらく、最後のどんでん返しのあまりの唐突さを解消するための役割を持たせているのでしょうね。このように、あまりにリアリティを追求しすぎると、却って煩わしいことになってしまう、ということがよく分かる演出でした。
それにしても、オスミンだけがやたらファッショナブルなのは、なぜなのでしょう。

BD Artwork © Royal Opera House Enterprises Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2016-09-03 20:41 | オペラ | Comments(0)