おやぢの部屋2
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Himmelslieder
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Marcus Creed/
SWR Vokalensemble Stuttgart
SWR/19015CD




世の中はハロウィン商戦の真っただ中、市内の本屋さんでは、店員さんが全員とんがり帽子とマントといういでたちで、客を迎えていました。レジに立っているだけならわかりますが、そんなトンマな恰好で棚の整理なんかをされていると、いったいここはどこなのか、と思ってしまいます。でも、こんなのはまだおとなしい方、本番ともなればいい大人がコスプレに熱中して、口から血糊をたらしていたりするのですから、その姿は醜悪以外の何物でもありません。いったい、どこで間違って、こんな風習がはびこるようになってしまったのでしょうか。
同じく宗教行事のお祭りでも、クリスマスの場合はまだ節度が保たれたままこの国の風俗にもなじんでいるように見えます。少なくとも、音楽に関してはとても実り多いものをもたらしてくれたのではないでしょうか。ハロウィンには何か音楽的な貢献って、ありましたっけ?
ですから、この季節のCDも、玉石混交ながら数多くのクリスマス・アイテムが登場することになります。「天国の歌」という、このSWRヴォーカル・アンサンブルにしては珍しいクリスマス企画のアルバムも、そんな「玉」の一つです。その中身はとても格調の高いもの、厳かに、真にこの世の平安を願いながらこの行事を祝うという思いが込められています。
まず、この合唱団のすばらしい女声パートだけで歌われるのが、ブリテンの「キャロルの祭典」です。よく少女合唱や児童合唱で歌われることもありますが、そのような、まるで天使の歌声のようなピュアな響きが、この大人の女声から聴こえてきたのは、とても幸せなことでした。録音会場は教会ですが、その豊かな残響をとことん利用して、この作品の最初と最後にある「入堂」と「退堂」のための曲で、実際に歩きながら(わざわざ靴の音をたてています)その遠近感を表現してくれています。確かに、コンサートホールで演奏する時にも、客席から登場するような演出もありますからね。
ただ、声はそのような無垢なものでも、表現にはいい加減なところは全くないのが、すごいところです。たとえば、ハープのソロの前の曲「この赤子が」では、大概の演奏では口が回らないために雑な演奏になりがちなところが、そんな難所は軽々とクリアして、いとも流麗な音楽に仕上がっています。
続いて、中世の聖歌が、男声だけによって歌われます。これはそれまでの女声とは全くテイストを変えて、粗野ささえも見せるような時代感を漂わせています。1曲目の「There is no rose」は2声、2曲目の「Verbum Patris humanatur」3声で歌われています。
次にフルメンバーが揃ってペルトの「7つのマニフィカト・アンティフォナ」では、普通にペルトといわれて思い浮かべるようなノーテンキなところの全然ない、とても強い意志の力が感じられます。ど真ん中の曲「おお、ダヴィデの鍵よ」でのハイテンションな叫びで、それは最高潮を迎えます。
ハインリヒ・カミンスキというドイツの作曲家が編曲した3つのクリスマスの聖歌は、いわば「箸休め」、手は込んでいてもあくまで素朴なアレンジからは、クリスマスへの敬虔な思いが素直に伝わってきます。
その後には、プーランクの「クリスマスのための4つのモテット」です。これも、ちょっと今までの印象を変えてくれるような、重量感のある演奏です。あくまで強靭なドイツっぽいハーモニー感がプーランクで味わえるのが、ちょっと意外。
最後は、スウェーデンの人気作曲家、ヤン・サンドストレムが、有名なプレトリウスの「Es ist ein Ros entsprungen」を素材にして、まるでリゲティの「Lux aeterna」のようなクラスターで再構築した逸品、こんなものをサラッと歌ってしまうのですから、本当にこの合唱団は油断が出来ません。というか、こんなひねりのきいたラインナップでクリスマスを楽しめる人は、ある意味ヘンタイ。
 
CD Artwork © Naxos Deutschland Musik & Video Vertriebs-GmbH
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by jurassic_oyaji | 2016-10-29 19:35 | 合唱 | Comments(0)