おやぢの部屋2
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MacMILLAN/Seven Last Words from the Cross



Stephen Layton/
Polyphony
Britten Sinfonia
HYPERION/CDA 67460



1959年生まれのイギリス、というかスコットランドの作曲家、ジェームズ・マクミランの合唱曲集、1993年に作られたタイトル曲の他に、これが初録音となる「聖母マリアのお告げ」(1997)と、「テ・デウム」(2001)が収録されています。
この世代で多くの宗教曲を作っている作曲家では、ジョン・タヴナーやもう少し上ではアルヴォ・ペルトが有名ですね。しかし、殆どヒーリングと変わらないほどの穏やかな風景の表出に終始している彼らに対して、マクミランの場合は、そのようないわゆる「聖なるミニマリスト」とは一線を画した、もっと厳しい作風を見ることが出来るはずです。彼にとって、「ミニマリスト」たちが築き上げた「安定した」技法は、数多くの表現手段の一つに過ぎません。そこにさまざまの技法を組み合わせることによって、ただの綺麗事ではない、彼が言うところの「喜びから悲劇までが存在する人間の日常生活」の諸相を、宗教音楽に於いても表現しているのです。
「十字架上の七つの言葉」の第1曲目で、そのようなマクミランの語法が明らかになります。ひっそりとした静寂の中から立ち上るかすかな弦楽合奏に伴われて、まさにイノセントそのものの女声合唱が聞こえてきますが、これは、まさにペルトあたりが用意する典型的な風景。しかし、しばらくしてその平穏なたたずまいは、リズミカルで攻撃的という全く異質のテイストを持つ合唱によって一変します。オーケストラ(弦楽合奏)が奏でるのも、また別の音楽、ここでは、相容れることのない3つの要素が独立してそれぞれの存在を主張するという、実にスリリングな光景を味わうことが出来るのです。
2曲目では、冒頭ア・カペラの合唱のとてつもない迫力にビックリさせられることになります。同じ歌詞で繰り返される短いモティーフが繰り返されるたびに微妙に味わいを変えるのが、とても魅力的です。それにしても、前の曲の全くキャラクターの異なるパートの歌い分けと言い、この曲での度肝を抜くような殆ど「叫び」に近い、それでいて完璧なハーモニーを持つ歌い方といい、この合唱団の表現力の幅の広さには驚かされます。時折見られる、スコットランドに固有の旋法(まるで、中世の音楽のような雰囲気を持っています)も、この合唱団の手にかかると見事にその土着性が失われずに新たな主張が生まれます。
オーケストラも、時には合唱に寄り添い、時にはことさら異質の要素として振る舞うという縦横無尽の活躍、殆ど「クラスター」に近いものでも、この音楽の中では確かな存在を見せています。そして迎えるエンディング、高音にシフトした繊細な弦楽器たちは、さまざまな過程を経て一度は終止形を迎えますが、それは音楽の終わりではありませんでした。その後に続く解決の出来ないアコード、そう、それはあたかもキリスト自身のため息でもあるかのように、永遠に終わることはないのかもしれないと思わせられるほど、延々と繰り返されるのです。
2002年の「ゴールデン・ジュビリー」のために作られた、オルガンと合唱のための「テ・デウム」では、まるでギリシャ正教のような(これは、タヴナーのツール)輪郭のはっきりした要素が加わります。この曲でも、オルガンによるエンディングには、ちょっと期待を裏切られるような新鮮な驚きが潜んでいます。このベジタリアンの作曲家(それは「ニクイラン」)、レイトン指揮のポリフォニーという最高の演奏を得て、確かに私の琴線に触れるものとなりました。
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by jurassic_oyaji | 2005-08-31 20:06 | 合唱 | Comments(0)