おやぢの部屋2
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SHOSTAKOVICH/Flute Sonata
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Paul Lustig Dunkel(Fl)
Peter Basquin(Pf)
Tony Moreno(Perc)
MSR/MS 1554




ショスタコーヴィチのフルート・ソナタなんてあったかな?と思われるでしょうが、もちろんそんなものはありません。これは、ポール・ラスティグ・ダンケルという人が、ショスタコーヴィチのチェロ・ソナタをフルート用に編曲して、自身で演奏したものです。そんな曲も含めて、このアルバムでは「世界初録音」の作品が4曲紹介されています。
全く知らなかったダンケルさんは、1943年に生まれたアメリカのフルーティストです。ということは昨年行われた録音の際には72歳だったことになりますね。現在でもニューヨーク・シティ・バレエ・オーケストラ(音楽監督はアンドリュー・リットン)の首席奏者を務めています。アメリカのオーケストラには定年はないのですね。ダンケルさんは、それだけではなく指揮者や作曲家としても活躍しているのだそうです。
そんな「生涯現役」を貫いているダンケルさんの演奏を、まずショスタコーヴィチの4つの楽章から成る大曲から聴いてみることにしましょう。それは、とてもそのような高齢者の演奏とは思えないような、しっかりとしたものでした。低音から高音までとても美しい音にはムラがありませんし、息のコントロールが巧みで、かなり長いフレーズもノンブレスでしっかり吹ききっています。1、3楽章のゆったりとした音楽はとても甘く歌い、2、4楽章の技巧的なフレーズでは、とことんアグレッシブに迫って、技術的な破綻など微塵も感じられません。これは、驚くべきことです。あのドナルド・ペックがシカゴ交響楽団を引退したのは、69歳の時でしたからね。ジェームズ・ゴールウェイは70歳を過ぎた現在でも演奏活動は続けていますが、もはや往年の勢いはありませんし。
2曲目は、ダンケルさんが2014年に作った「Quatre visions pour quatre flutistes」という、文字通り4人のフルーティストのための4つの小品です。なんでも、この作品は、彼が昔参加したウィリアム・キンケイド(この人も、往年の名人)のミュージック・キャンプに参加した時の想い出がモティーフになっているのだそうです。そこでは、たくさんのフルーティストたちがオーケストラ・パートの難しいフレーズや、エチュードなどを吹きあっていました。そんな情景が思い浮かぶのが、たとえば、1曲目の「La cage des oiseaux」。タイトルは、オーケストラのオーディションではよく吹かされるはずのサン=サーンスの「動物の謝肉祭」の中のフルート・ソロのタイトルですね。それをみんなが吹いている中から、「牧神の午後」とか「ダフニス」に登場するソロの断片が聴こえてくるという、フルーティストならではのぶっ飛んだ発想の曲です。他の曲も、「La nuit des faunes」とか「Taffanel et Chloe」といった、フルートを吹く人なら思わずニヤリとしてしまうようなタイトルが並んでいます。
共演しているのは、すべてダンケルさんの同僚、ニューヨーク・シティ・バレエ・オーケストラのメンバーです。ダンケルさんの無茶振りに温かく付き合っているというのがほほえましいですね。
次は、トニー・モレロというやはりダンケルさんのお友達の打楽器奏者の2011年の作品「Episodes
for Flute and Percussion」です。なんでも、「フィボナッチ数列」によって作られているのだそうですが、そんな面倒くさいことは全く感じられない、まるでアンドレ・ジョリヴェの作品のような原始のエネルギーに満ちた作品です。フルートが奥まって聴こえてくる音像設定もあって、メインは打楽器であるかのように感じられます。
最後も、やはり友人のタマル・マスカルが作ったフルートとピアノのための2つの作品。「Sof」は元は歌だったものをフルートのために作り替えたもので、とても甘いメロディが心に染みます。もう1つの「Mechanofin」は、変拍子を多用した17分以上の大曲。まさに体力勝負といったこのミニマル・ピースも、ダンケルさんはなんなくこなしています。この歳でこんなにタフなのは、やはりユンケルのおかげなのでしょうか。

CD Artwork © MSR Music LLC
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by jurassic_oyaji | 2016-11-17 20:29 | フルート | Comments(0)